「日本三大祭り」「日本三大河川」とは何を指すのですか。

よく耳にする「三大○○」とか「○○四天王」とかいう類のものは、その指し示す内容をいったん気にするとしばらくの間妙に気になりませんか?
こういった事柄を調べるときのアプローチは覚えておくと、ちょっとした場面で役に立つことがあるかも知れません*1。もちろん「これが正しい!」という回答に行き着くことは必ずしも多くなく、諸説あるものがほとんどです。
レファレンス協同データベースには、こんな事例が相当数ありますが、そんな中から今回は千葉県立西部図書館さんの提供事例を紹介しようと思います。
まずは、回答を引用します。

本質問のように、数字が関わるものについては、事象を零から無限大に分類して説明を付している『名数数詞辞典』(東京堂出版)や、『日本三大四大五大事典 自然・動植物編』(日本情報センター)のような資料が役に立ちます。
質問の「日本三大祭り」は『名数数詞辞典』に出てきます。これによれば、京都賀茂神社葵祭(5月15日)、大阪の天満天神祭(7月25日)、東京の日枝神社山王祭(6月15日)をあげる説、葵祭、住吉南祭(大阪住吉大神、7月21日)、くんち(長崎諏訪神社、10月7・8・9日)とする説、その他幾つかの説があります。
次に「日本三大河川」ですが、上記の2冊及び『トップ・ランキング事典』(東京堂出版)ともに、長さでは信濃川利根川石狩川の順。流域面積では利根川石狩川信濃川の順、となっています。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000004121

この回答のすばらしいところは、なんといっても、1行目です。「数字が関わるもの」について調べるときによく使う辞典を紹介しており、質問者、あるいはこの事例を読んだ人がこの質問にて調査されている「三大祭」「三大河川」以外のものを調べることができるような回答になっていることがその理由です。
「名数」という言葉は決まった数のつく言葉という意味をもちますが、こういった言葉を集めた辞典が世の中には存在します。なんといっても有名なのはこの事例でも取り上げられている『名数数詞辞典』でしょう。一度この『名数数詞辞典』を手にしてみると面白いです。名数にはこれほど多くのものがあるのか、と感心します。
また、この事例では日本全国を基準にした名数を調査していますが、地域によって「三大○○」という具合に呼ばれているものが数多くあり、そういう特定の地域を対象とした名数辞典もあります。(もっとも、辞典といっても独立した1冊の本ではない場合もありますが)各地域の図書館の地域資料を探すと見つかるかもしれません。
「日本三大祭」については、この『名数数詞辞典』で諸説確認できています。*2
「三大河川」については、『名数数詞辞典』以外に『日本三大四大五大事典 自然・動植物編』と『トップランキング事典』を参照しています。名数事典の類ですが、『日本三大四大五大事典』ってすごいタイトルの本ですよね。「大きい」の意味が「河川長」か「流域面積」かの違いはあれど、自然のものが急に大きく変動することは考えにくい事柄です。名数事典とは若干異なりますが、『トップランキング事典』を参照するというのも十分練られた検索戦略と言えるでしょう。この発想も大事ですね。
レファレンスでは、通常主題を重視しますので、普通のアプローチを考えれば「祭礼」とか「河川」といったキーワードを元に調査することになると思います。ですが、覚えておくなら、この事例のように言葉の用例という主題の設定の仕方もありだということでしょう。「名数」というキーワードが頭に浮かべば、これらの辞典類にたどり着くにはそう難しいことではないと思います。
レファレンス協同データベースで「名数数詞辞典」をキーワードに検索してみると、この辞典を用いたレファレンス事例が数多くヒットしますので、一度見てみてください。面白いですよ。

*1:とはいえ、そんな場面は具体的に想定できないのですが…

*2:余談ですがnachumeがこの中で見るとしたら、長崎くんちを見てみたいです。