略称から雑誌名を調べる(欧文編)

今回は調べ方マニュアルから,雑誌の略誌名を調べる一般的な手順です。
知ってる人ならなんのことはないのですが,知らない人はなかなかたどり着けないというのが雑誌の略称。

1. はじめに
 ・存在する全ての雑誌を網羅している略称表はないことを前提として認識しておきましょう。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.manual?id=2000001224

これです,これ。一番最初に,前提が書かれています。すべての雑誌を網羅しているものはありません,と。あるとすればそれはレファレンス・ライブラリアンの頭の中です。
もっとも,慣れてくれば「Sci」は「Science」とか,「J of」は「Journal of」とかそういうのはある程度決まったパターンがあるので,これかな? と予想をつけながら書誌検索を行うことができますので取っつきにくさを克服してしまえば,それほどではないと思います。
このマニュアルには,実際にデータベースを検索するときのコツも書かれていていいですね。

Webcat  
  http://webcat.nii.ac.jp/ (2006/09/29確認)
  (雑誌に限定し、タイトル・ワードやフリーワードのフィールドを使う)
  a. 略称をそのまま入力し検索する。 (書誌に略称のデータが記述されている場合ヒットします。)
  b. 略称の後にアスタリスク「*」を付けて前方一致検索をすることができます。
  例: Lett. Pept. Sci. → Lett* Pept* Sci*  → Letters in peptide science.

前にも触れたことがありましたが,トランケーションをうまく使うのが検索のコツなのです。Webcatを検索するときには,トランケーションが必須といっても過言ではありません。このことは逆に「使わなくても良い場面では使わない」ということも内包しています。
そのほか,このマニュアルではいくつかのデータベースをあげていますが,契約が必要なものとそうでないものをきちんと明記しています。「要契約」のものはこの大学では契約していて使えるのでしょうか。それが書かれているともっといいと思います。

少し脇道にそれます。これを作成したのは大学図書館です。大学生向けに書かれたと同時に,大学の図書館員向けに書かれていると見ることもできます。
司書になるためには,定められた単位を修得しなければなりません。現在の図書館司書課程の中で,こういった具体的な雑誌を探す演習を授業に組み込める時間は少ないです。2年の課程ならまだしも,集中講習会などでこの種の演習をいくつもこなすのは時間的に不可能です。
卒論を書くときなどに実際に自分のテーマにあわせて洋文献を探すなど経験があると大分違うのですが,そんな都合の良い経験を持つ司書ばかりではないのです。
そして何より,大学図書館ではカウンター業務はアウトソーシングがほとんどで,司書の資格を持たない人も中にはいます。
そういう方々でも図書館のレファレンス・カウンターに立てば立派なレファレンス・ライブラリアンと見なされます。大学図書館のカウンターだと,こういった雑誌の所蔵調査は普通です。もちろん,数か月もすれば何となく勘どころがつかめてきますので,初見の記述にも動じなくなってきます。ところが,せっかくカウンターでの仕事がうまくなってきた頃には契約終了,なんてこともしばしばです。
カウンター業務のアウトソース化は大学図書館のみならず,公共図書館や各種専門図書館でも同じような状況です。それが良いか悪いかはとりあえず置いておくことにして,現実問題,そういう状況でカウンターサービスを展開しなければいけない「今」があります。毎日の業務を通じて,レファレンスに関する研修を行わなければなりません。OJTがしっかり機能する職場ならまだしも,人的資源がそれほど潤沢ではない図書館の方が多いわけで,調べ方マニュアルはそうした研修にも使えます。むしろ,使わざるを得ないのではないでしょうか。研修資料を一からつくるより,調べ方マニュアルを使って研修した方が,かける労力が少なくて済みます。
レファ協を研修に使うというのは以前から話題になっていることではあります。そして,それは非常に有効であろうというのもわかっています。現に,nachumeも使っています。
レファ協は図書館を取り巻く状況にも対応しているのです。ほめまくりと言いながら,少し穿った見方をしてみました。
でも,この調べ方マニュアルは良くできていますよ。現場で困るのは実際どのデータベースをどのように検索式を入力するか,という点につきるからです。そういうのに対応できる調べ方マニュアルは,図書館の利用者にも有益なのだと思います!