いまや官公庁や大企業のみならず,あらゆる業界で情報システムがその業務に使用されているといっても過言ではありません。
使いやすい情報システムの開発にはそれなりの確たる考え方があるはずです。
今回も嘉悦大学さん提供事例ですが,シンプルながらも,的を射た回答となっておりますので紹介したいと思います。
まずは回答と回答プロセスから。

<回答>
1.以下の図書を案内した。
●『みどりの窓口を支える「マルス」の謎 : 世界最大の座席予約システムの誕生と進化』(杉浦一機著 草思社 2005)
●『クロネコヤマトの宅急便 : NEKOシステム開発ストーリー』(石橋曜子ほか著 アイテック情報処理技術者教育センター 2005)
●『トヨタイズムを支える「トヨタ」情報システム』(戸田雅章著 日刊工業新聞社 2006)

2.以下の雑誌記事を案内した。
●矢口 竜太郎, 小原 忍 「特集 ITがあってこそ−企業の"強さ"を支える情報システム」(『日経コンピュータ』676号(2007/4/16))

<回答プロセス>
自館のOPACおよびCiNiiで「情報システム_企業」「情報システム_事例」などのキーワードで検索し、自館所蔵の資料を案内した。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000041245

プロセスは特にどうということなく,調査手法の定石というものでしょう。CiNiiは論文の記事索引として使えます。そして,またの名を「論文情報ナビゲータ」というように,本文のテクストまで入手できるものや,引用情報なども収録されています。公共図書館ではあまりなじみがないかもしれませんが, CiNiiはすごく便利ですので,積極的に活用してみてください*1
回答もスマートですね。図書資料と雑誌記事という区分でわかりやすいです。『日経コンピュータ』はコンピュータについての総合専門誌(なんか変な言い方ですが)です。同じ日経の専門誌でも,ネットワーク関係に特化した『日経Network』やシステム開発関係の『日経Systems』,経営と情報システムという点では『日経情報ストラテジー』などがあります。ほかにも専門誌が各種ありますので,必要に応じて提供できるといいですね。当然,自館で所蔵があればすぐに提供できますが,なければ所蔵館を探すなど入手方法を検討します。
余談というか何というか,回答文中で紹介されている『みどりの窓口を支える「マルス」の謎」』という本ですが,これがまたおもしろいんですよ。
この「マルス」というシステムは,長年にわたって改良され続けてきたシステムなのですが,処理が集中した場合にいかに対処するかというようなことなんかは,なるほどなぁと感心しました。なによりも,システムの解説と同時に,座席予約を業務上どのように運用するかという解説がなされています。システム化と業務の運用は表裏一体の関係にあるものということがよくわかります。これは,情報システムの本を探そうとするときに,闇雲に情報科学情報工学の棚ばかりでは見落とすものが多々あるということを示しているともいえます。
この事例の分類に「336(経営管理)」が付与されているように,情報システムという主題は組織の経営と密接に関わります。「企業の情報システム」という場合,むしろ重要なのは「企業の」という部分なのですが,「情報システム」というキーワードにつられて「007(情報科学)」や「548(情報工学)」の書架にいきなり見に行くと,いまいち微妙な結果になるやもしれません。
ただ,書架分類上,情報システム関係はすべて「007」を振るという運用をする図書館もあるでしょうから,その辺のさじ加減は図書館によりけりです。情報関係の資料はNDCで書架をブラウジングしようとあちこち駆け回ることがよくあります。めげずに関係しそうな棚をあちこち駆け回るしかないのですが,レファレンスライブラリアンとしては,どこをどのように駆け回るか,というマップが頭の中に浮かぶといいですね。
「この棚がだめだったら,つぎはあっちの棚に行こう」というような道筋が,いろんな主題ごとに見えてきたらしめたものです。なかなか難しいとは思いますが,どのような資料がどのように分類されているか,を意識することが重要です。勘だけであちこち駆け回るより, OPACを引いて分類と対照させていく作業とあわせてあちこち駆け回った方が,圧倒的に早く身に付くと思います。何度も書いていますがレファレンスの原義は参照ですから,レファレンスライブラリアンとしては,「何をどのように見ていけば資料にたどり着けるのか」という引き出しを数多く持っておきたいものです。

*1:わかりやすいガイドがあります→[http: //ci.nii.ac.jp/cinii/pages/quick_guide.html:titile]