一閑張の具体的な工程について

私事ですが,一閑張りについてのレファレンスを受けたことがあります。
nachumeが勤めている図書館は一閑張りの地元である香川県とはかなり距離があります。自館資料で一閑張りに関して書かれていそうな資料はそれほど多くありません。どうしても,となれば地元の県立図書館に地域資料に何か無いか? と協力レファレンスを依頼しようかと思っていたところでした。
その時,レファ協を検索して,この事例を見つけたときは嬉しかったです。非常に,役に立ちました。

「一閑張」の資料について
・「日本の伝統工芸」
p52〜53に「讃岐一閑張の技法」という記事がある。
坂出市の「民芸城山」の一閑張の製法について、簡単にまとめられている。
工程途中の小さな写真が、2枚ある。
・「中国・四国の民芸」(山陽新聞社編)
p158〜161「一閑張り」
読み物風にまとめられ、製法の記述も若干ある。
工程を説明する写真はない。
・日本の地場産業 伝統的工芸編 総カラ−版     1981.10
p.226に「一貫張」の項あり。次のような記述あり。
・「・・・「一閑張」が本来の書き方であるが、讃岐地方では、これを「一貫張」と書く。・・・」
・「竹で編んだ骨組に手漉和紙を何枚も塗り重ね、それを柿渋の液に浸して乾かし、濃い飴色になるまで何回もくり返して仕上げる、という技法である」
・うるし工芸辞典 光芸出版編集部/編 光芸出版 1978.5
p.36-37「一貫張」の項あり。図版「一閑張作業(右、素地に紙を合わせる 左、刷毛で張る。)」あり。
・全国伝統的工芸品総覧 受け継がれる日本のものづくり 伝統的工芸品産業振興協会/編 ぎょうせい 2003.12
p.292に「一閑(貫)張」の項あり。
また、この資料のp.373-380「地方公共団体(都府県)指定伝統的工芸品一覧」の
香川県」の項に「一閑張・一貫張(p.379)」が含まれている。
・漆よもやま話 山岸寿治/著 雄山閣出版 1996.6
p.156-161に「一閑張り」の項あり。
・漆芸の伝統技法 佐々木英/著 理工学社 1986.12
p.6-8、9に「(3)一閑張り」の項あり。「表面だけ和紙貼りにした技法」について短い説明あり。
上記以外にも、香川の民芸、工芸、物産品等の資料を 調査しましたが、 工程、製法の詳しいものは見当たらなかった。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000002834

結果的には「見つからない」というのが回答です。
それも一つの回答です。これだけ調べた文献には載っていない,というのがわかると非常にありがたい。香川から遠く離れた図書館で回答を出す場合,地元の公共図書館が探しきれなかったとあるものについて,追試をしてまで回答を提供するのは難しいです。地元の県立図書館以上に資料を持っているということはありませんから。
そういう意味で,各地の公共図書館は地元についてのレファレンス事例をどんどん提供していただければと思います。現在の図書館やその類縁機関を見る限り,地元の資料を保存しているのはその地域の図書館です。自分が,ある地域に関することを調べたいときに,その地域の図書館にレファレンスを依頼するのも一つの手段ではあります*1が,まずは自分がいま住んでいる所の図書館へ行ってみる,という人もいるでしょう。レファレンス協同データベースは,まさにそういう時に役に立ちます。
公共図書館が提供しているデータはの多くは,その地元に関する事例や調べ方です。他の地域からでも,他の地域のことについて知ることができるというのは非常にありがたいです。複写や相互貸借を申し込むにしても,書誌事項などはレファ協のデータでわかりますし,どの資料を借りたらいいか,で悩む時間は少なくなります。
全国のレファレンス担当者の方! 行き詰まったら,レファレンス協同データベースを検索してみることをオススメします。似たような事例に行き着くかもしれませんよ!

*1:「地元に住んでいる人以外からのレファレンスはその地域に関することに限って受け付ける」としている図書館は多いです。