世界各国の選挙年齢

統一地方選の時節柄といいますか,こじつけといいますか選挙についての事例を紹介します。
今回は似たような事例を3つ並べてみようと思います。

事例作成日の新しい順に,まずは事例作成日2005年3月,近畿大学の提供事例から。

<質問>
世界各国の選挙権・被選挙権年齢を調べたい。
<回答>
各国の選挙権・被選挙権・成人年齢一覧 (NPO法人Rights)
http://www.rights.or.jp/html/documents/age.html (2005/03/08確認)
NPO法人Rights
http://www.rights.or.jp/ (2005/03/08確認)
<参考資料>
『16歳選挙権の実現を! : 選挙権年齢の引き下げを考える』 Rights編 現代人文社 2002

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000020721

つづいて事例作成日2002年1月の国立国会図書館

<質問>
世界各国における選挙権年齢。
<回答>
諸外国の選挙権の年齢について、当館では下記資料(1)〜(3)を所蔵しています。
資料(1)では、諸外国の選挙制度が上院、下院別にまとめられており、選挙権の年齢も確認できます。
資料(2)は、各国の議会政治や政治機構について国別に解説したもので、選挙権の年齢が Minimum age for voting として記載されています。
資料(3)は、各年ごとに諸外国の選挙結果をまとめたもので、各国のElectoral system(選挙制度)の Voter requirements に age の項があります。
なお、資料(1)にある、上院下院別に選挙制度をまとめた一覧表の備考欄には、「Chronicle of Parliamentary Elections 各年版及び関係資料によった」との記述があり、主に資料(3)の情報をもとに作成しています。
(1)『調査と情報』(298):1997.4 <Z1−403>
  諸外国の選挙制度−−類型・制度一覧・関連資料(伊藤信博、富田圭一郎)
   pp.9-16:諸外国の選挙制度(下院)(一院制を採っている国を含む)
   pp.17-22:諸外国の選挙制度(上院)(公選制を採っている国)
(2) World encyclopedia of parliaments and legislatures. Washington D.C. Congressional Quarterly 1998 2v.
  <A112−A447>
(3) Chronicle of Parliamentary Elections. Geneva Inter-Parliamentary Union 21cm 年刊
(Chronicle of Parliamentary Elections and Developments の改題)
  所蔵:Vol.30:1995.7/1996.12- <Z61−B43> < >内は当館請求記号

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000014294

3つめは県立長野図書館。事例作成日は2001年03月です。

<質問>
ヨーロッパの国々の中で、東欧以外の、選挙権年齢が18歳以上である国はどこか知りたい
<回答>
次の資料に国名の記載がある。
1 『北欧の政治』(オロフ・ぺタション著 早稲田大学出版部 平10)[312-ペ]p13〝表1-1選挙権の発展〟デンマークフィンランドアイスランドノルウェースウェーデン
2 『図解選挙制度のしくみ』(選挙制度研究委員会編著 ナツメ社 平11)[314-ず]p52 ドイツ、p54フランス国民議会(下院)、p56 イギリス下院、p57 イタリア,オランダ,ベルギー
3 『世界の議会 3 ヨーロッパ 1』(ぎょうせい 昭58)[314-179-3]p207 ルクセンブルク
4 『世界の議会 4 ヨーロッパ 2』(同上)[314-179-4]p126 スペイン、p159 ポルトガル、p165ギリシア、p209 マルタ、p241 アイルランド
<回答プロセス>
(1)[NDC 302 各国の政治・経済・社会・文化事情]の書架に行き、選挙制度の記載がないかを調べるが該当する資料はなし。
(2)[NDC 314 議会]の書架へ行き、『世界の議会 3〜5 ヨーロッパ 1〜3』(前掲)の中から、答の国名がわかったが、出版年が古いため、別の資料をあたることにする。
(3)『西欧の議会』(読売新聞調査研究本部編 読売新聞社 平元)[314-203]p425〜429に〝各国の選挙制度〟あり。ここで、イギリス,フランス,スウェーデン,イタリア,西ドイツが、18歳以上が選挙権年齢であることがわかったが、これも10年以上前の資料であることから、出版年が更に新しい答の1,2の資料を検索し、国名を確認した。
※引用時に丸囲み数字は括弧表記へ変更した。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000025456

県立長野図書館提供の事例は「東欧以外のヨーロッパ」という条件がついていますが,3つとも他国の選挙年齢についての事例です。
3つ並べると面白いですよね。似たような質問に対して,いろいろな回答が存在するということがわかると思います。当然ですが,どれも正解です。
近畿大学提供事例では,参考資料に挙げられている1冊を元に,Webサイトを紹介しています。残念ながら,「各国の選挙権・被選挙権・成人年齢一覧」は現在は削除されているようです。インターネット上のリソースでの回答は鮮度が命ですね。でも,2005年当時はこの回答で解決できたということがわかります。これはある意味重要なことなのです(この重要性は後に機会を見て触れていきます)。
NDL提供事例は検索ワードの決定に役に立ちます。もちろん,回答に示された資料も参考になるのですが,「選挙年齢=Minimum age for voting」や「選挙制度=Electoral system」というのは,知らない人にとってはありがたいことこの上ないものです。知っていればなんのことはないものですが,レファレンスにおいてお客さんが目の前にいたりするとパッと思い出せないなんてこともよくありますし。
県立長野図書館提供事例は回答プロセスが詳しく書かれています。資料の出版年によって提供する資料を選別しています。非常に重要ですね。レファレンスの回答において,資料を提供するときに,はたしてその資料がいつ出版されているかというのは非常に重要です。普段の回答では何気なく行っているので,レファレンス協同データベースへ登録する事例にはあまり書かれていません。
事例作成にあたって,提供した資料から除かれた資料があった場合,どうしてその資料がはじかれたのか,を回答プロセスあたりに書いてくれると非常に参考になります。よろしくお願いします!
今回見たように,似たような事例だとしても,それぞれの事例にはほめポイントがそれぞれにあるものです。このブログを読んでいるレファレンス担当係の方々,あるいは現在司書課程で勉強している方々,レファ協の事例をたくさん読んで,いろんなアプローチを勉強してください。こんな風に,似たような事例は無いか探して比較するのも勉強になります。
このブログを読んでいるレファ協担当者の方々へお願いです(自分もだけど)。似たような事例が先にあったとしても,同じ資料を提供したとしても,それはそれで一つの事例として,レファ協に登録してください。その時点で資料を提供したというレファレンスの存在を残すことができるのです。