Vossische Zeitungという新聞の1911-1912年の所蔵館を確認したい。

昔読んだ記事をもう一度読みたいとか,ある製品についての報道発表を時系列で追いかけたいとか理由はさまざまでしょうが,過去の新聞を探したくなることは日常よくあることではないでしょうか。日本の中央紙であれば,大学図書館都道府県立図書館には縮刷版やマイクロフィルムでかなり古い時期から揃っていることが多いです。また,地域新聞であれば,その地域の都道府県立図書館がやはりマイクロフィルムなどで所蔵していることが多いので,探そうと思えば案外探せるものです*1
ところが,それが外国語の新聞となると,なかなか探しづらいです。そういう時は,図書館に所蔵館を調べてもらった方が賢明だと思います。
回答を見ていきましょう。

国立国会図書館の全国新聞総合目録データベースを検索したが、該当年の所蔵先は見つからなかった。ドイツ(ベルリン)の新聞であることは判明した。次にBritish LibraryのNewpapers Catalogueを検索した。Microfilmで1816-1919が所蔵されていた。また、この新聞がKoniglich privilegirte Berlinische Zeitung von Staats und gelehrten Sachen. 26 Sept.1811; 2 Jan.1816 - 23 Dec.1911からVossische Zeitung. 24 Dec.1911 - 31 Dec.1919に変遷していたこともわかった。British LibraryへのILLを案内した。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000013753

まず,この事例では,質問者が持ってきた書誌事項をもとに,新聞総合目録をひいています。
この目録は,新聞の所蔵を調べるのに非常に役立つデータベースです。資料形態も原紙の所蔵があるのか,マイクロフィルムなのか,マイクロフィッシュなのかなども分かるのが便利です。どの図書館においても,過去の新聞は原紙は保存用としてストックしておき,利用にはマイクロフィルムや縮刷版を用いるのが一般的です。
せっかくなので,一緒に検索してみることにします。
http://sinbun.ndl.go.jp/
で,「新聞の検索」をします。「新聞名」に「Vossische Zeitung」をいれ検索すると2件ヒットします。原紙とマイクロ資料です。原紙のほうをみると,ドイツ語の新聞だということがわかります。それぞれの所蔵館を見てみますが,いずれも1911年〜1912年の所蔵はない模様です。
「所蔵はありません」と回答するのもいいのですが,でもそれだけではレファレンスの回答としては半分です。もう半分はやはり,所蔵館や入手方法まで提示したいところです。新聞総合目録で見つからなかった所蔵が見つからなかった場合,国内の機関ではもっていない可能性があるということです。もっとも,新聞総合目録に所蔵データを提供していない機関もありますので,国内の機関を根気よく探すことも考えていいと思います。
ただそれも大変なので,国外に目を向けて見ます。
この事例では,国外の新聞なので,海外でなるべく所蔵資料の多い図書館である British Library をひいています。British library はイギリスの国立図書館です。BLと略すことが多いです。非常に幅広く資料を収集しているので,国外の資料を探す時は,このBLとLC*2の目録でなんとかなることが多いです。
せっかくなので,BL提供の新聞目録をひいてみましょう。
http://prodigi.bl.uk/nlcat/welcome.asp
serch「Vossische Zeitung」で1件ヒットします。Full Record(詳細表示)をみると「Königlich privilegirte Berlinische Zeitung von Staats und gelehrten Sachen」というのがタイトルだということがわかります。そして,マイクロフィルムで1816〜1919年の所蔵があることもわかります。さらに,この回答にあるように新聞紙名がかわり(Continued as),「Vossische Zeitung」として発行されていたこともわかります。
ここで,質問者の求めている1911〜1912年の所蔵があることもわかりました。「British LibraryへのILLを案内した」とあるように,この図書館を通じてBLへ利用を申し込むことができることも,きちんと回答しています。この場合は,マイクロフィルムを借受けたのか,複写の依頼をしたのかわかりませんが,いずれ,BLの資料を日本にいながら,利用することができました。
このように図書館は,他の図書館の資料も利用できる窓口となりえるのです。
そして,この事例のように,国内になくても,国外の所蔵すら探し出してくれます。この事例提供館は大学図書館なので,海外の所蔵をさがすこともよくありますので,慣れていたのだと思います。公共図書館でもできなくはないのですが,担当者の能力差があらわれてくるところでしょう。
いろいろな,目録を探し,所蔵を確認し資料の提供まで行うというのは図書館の機能そのものです。ここまできちんと出来ているのはとてもすばらしいと思います!

※このエントリ中のURIはすべて2007年4月1日時点でのものです。

*1:都道府県立図書館にあるとすれば近所の図書館から照会してもらうことができます。

*2:アメリカ議会図書館:Library of Congress