イギリス在住でThe virago pressという出版社の編集をしているShahrukh Husain(パキスタン人女性)という人物、および作品について知りたい。わからなければ、勤務している出版社でもよい。「Women Who Wear Breeches」(「夫をしりにしく女たち」邦訳はされていない))の著者。児童書も書いている。

今回も海外の図書館のOPACを利用したレファレンス事例を取り上げます。といっても,事例に追記されただけなので,レファレンスの主題としてはあくまでも,西洋人名について調べる,といった方が適当ですね。
回答を見ていきます。

<回答>
『Whitaker's Books in Print 1998 vol.2』に、〈Shahrukh Husain〉の著作5点記載あり。
(1)「Bitches:Virago Book of Evil Women」
(2)「Demons,Gods and Holy Men from Indian Myths and Legends」
(3)「Mecca」
(4)「Virago Book of Witches」
(5)「Women Who Wear the Breeches」
『Books in Print 1997ー98 Authors VOL.2』には、上記作品の他に3点の記載あり。
(1)「The Goddess(Living Wisdom Ser)」
(2)「Handsome Heroines:Women as Men in Folklore」
(3)「Daughters of the Moon:Witch Tales from Around the World」
著者の経歴や勤務先については、わからなかった。
追記:アメリカ議会図書館のオンライン・カタログを〈Shahrukh Husain〉で検索すると、20件ヒットする。(http://catalog.loc.gov/ The Library of Congress 2007/02/26最終確認)

<回答プロセス>
『外国会社年鑑』『児童文学辞典』『Who's Who in the world』に掲載なし。
追記:以下の資料を追加調査するが、掲載なし。『外国人物レファレンス事典 20世紀』『世界女性人名事典』『現代外国人名録 2000・2004』『西洋人名・著者名典拠録』『20世紀西洋人名事典』(2007/02/26)
(※引用時にテキスト整形を行った)

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000033976

著者の経歴や勤務先については、わからなかったですが,作品については,きちんと調べています。この事例は冊子体資料である特定の人の著作を探すための基本がきちんとできています。
事例の作成がおよそ10年前の1998年です。インターネットでOPACが公開されることが多くなってきた頃でしょうか。当時nachumeは大学で司書課程の授業を履修していた頃です*1
当時(今もですが)このような外国人名を調べるのは,人名辞典の類を使います。ですが,ただ闇雲にさがすより調べたい人がどんな分野で活躍しているのかがわかった方が,調べやすいことも事実です。この質問の場合,調べたい人が書いた著書も,出版社に勤務していることもわかっています。
回答プロセスに『児童文学辞典』とあるのは,そういう風に絞り込んで探してみようということだったのでしょう。残念ながら,載っていなかったようですね。
『Who's who in the world』は人物名鑑といった方がいいでしょうか。世界のあちこちで活躍している人を集めた人名録です。これにも載っていないようです(ただ,どの版を見たのかなどはこの記述ではわかりません)。
次に,出版された本の中に,この人の著作はないか,と考えたのでしょう。『Whitaker's Books in Print 1998 vol.2』と『Books in Print 1997-98 Authors VOL.2』を使って,Shahrukh Husain の著作を探しています。今でこそ,すぐにLC(アメリカ議会図書館)やBL(英国図書館)のOPACを簡単に検索すればと思いますが,当時は,それよりも,「Whitaker's Books in Print」や「Books in Print」を用いた方が網羅性があったのです。
これらの資料は簡単に言えば,総合出版目録です。各出版社が出版していて現在手に入れられるものを掲載した目録です。日本では『日本書籍総目録』というのがありました*2。「Books in Print」はアメリカの,「Whitaker's Books in Print」はイギリスの出版目録です。規模があまり大きくない図書館では,あまり見ることはないかもしれませんが,覚えておいて損はありません。ちなみにフランスには「livres disponibles」という出版目録があります。
これらの目録から,Shahrukh Husain の著作を調べています。すると,8点わかったということです。(おそらく事例データの提供時に追試したのだとおもいますが)現時点でLCで20件ほどヒットするそうです。勤務している出版社はわからなかったのでしょうか*3
「外国会社年鑑」は著作の出版社を引いてみたのでしょうか(どのように使ったのかうまく思いつきません)。出版社が掲載されていたら,Shahrukh Husain が載っているかもしれないという発想でしょうか。これはすごい発想ですね。相当がんばっていろいろな資料を見たことでしょう。きっと回答プロセスに載っていない参考資料もたくさん目を通していると思います。
この事例は,なんども繰り返しますが,ある人の著作・作品をインターネットを使わないで調べる時のお手本になると思います。レファレンス・ライブラリアンの修行をしている人は,一度このようにネットを使わないで回答するにはどうしたらいいか,というのを考えてみてください。参考資料を否が応でも使わなくてはなりません。そんな風にいろいろ調べたときに,「あーなるほど,だからこういう風に索引がついているのか」とか「こんな書誌があったらいいのに」とか思うことがたくさん出てくるでしょう。そういう経験を蓄積していくのも力になると思いますよ!

*1:あー,ついこの間のような気がしてならないのですが,結構前ですね。昔話は追々していくことにしましょう。

*2:現在は出版書誌データベース

*3:現物をみるとどこかに書かれていそうですが……