桜の開花は、日本の南と北とでは、どのくらい差がありますか。

レファレンス協同データベースの検索トップページには「おすすめ事例」があります。これは事務局で選んだものを載せているようです。ここに載るのは季節柄を反映したものが多くなっています。今の時期だとやはり桜なのでしょう。桜関係の事例がピックアップされています。
桜の開花日は天気予報やニュースで話題になりますが,北日本と西日本では大分違います。入学式に桜があるところもあれば,無いところもあります。日本は南北に長いんだなあーと改めて思い知るのですが,さて,レファレンスでこんな回答はいけません。どんな資料になんて書いてあるか,を探し出すのです。何を紹介したらいいのかすぐに思いつくでしょうか?
では回答を。

<回答>
サクラ(ソメイヨシノ)の開花日は、九州南部で咲きはじめてから、関東南部で咲きはじめるまで、わずか4〜5日の期間しかありませんが、関東南部から、東北地方の北部までには、約1ヵ月くらいかかります。
『理科年表』(平成16年)によれば九州の宮崎ではソメイヨシノの開花日は3月25日。北九州(福岡)では3月26日。東京は3月28日。青森は4月26日。北海道の稚内ではエゾヤマザクラが5月16日というような観測結果の平均値が載っています。
また、沖縄県那覇ではヒカンザクラの開花日が、1月19日となっています。
『日本の動植物季節前線図』によれば、サクラの開花日の早いときは、場所による開花日の差が大きく、季節が遅れたときは、開花日の差が小さいようです。さらに、開花日は樹齢によっても異なり、若木は老木よりも多少遅れます。
<参考資料>
『理科年表 第77冊(平成16年)』 文部科学省国立天文台編 丸善 2003年 (246〜247頁)(R403.6/コ/04)
『四季・動植物前線』 百瀬成夫著 技報堂出版 1998年 (106〜109頁)(468.5/モ)
『日本の動植物季節前線図』  百瀬成夫著 丸ノ内出版 1972年 (36〜37頁)(468.5/モ)

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000029822

提供した資料のうち,『理科年表』は定番のレファレンスツールです。理科年表に何が載っているか,レファレンス担当の人は覚えておいた方がいいです。4月から担当になった人はがんばって夏までに理科年表の内容を覚えてください。夏休みの課題などに使えることがありますので。
そのほか,『四季・動植物前線』,『日本の動植物季節前線図』はタイトルのままですね。どうやってたどり着いたかも,それほど考えなくてもいいでしょう。植物学と考えて,NDC470番台を探すか,あるいはその前後,NDC468の生態学付近を書架ブラウジング,が手っ取り早いでしょうか。あるいは,件名に「植物季節」,「生物季節」と入れればたどり着くでしょう。この資料は参考資料棚にあることが多いので,それほど苦もなくアクセスは可能でしょう。問題は,その資料に載っているであろう,という確信をもって手にするかしないか,です。
1972年の資料だけではなく,それよりあとに書かれた資料も提供しています。同じ人が書いた本であれば,同じ主題について書かれたものが多く,著者検索は類書探しの一つの手段になります。
この事例は,レファレンスの基本手順をきちんと踏んだレファレンスです。こういう問い合わせには,レファレンス担当じゃなくても,図書館員ならできてほしいところです。
だからといって,この事例を軽んじているわけではありません。こういうレファレンスが積み重なって,図書館やレファレンスサービスは存在しているのです。一つひとつ丁寧に回答していくことが必要なのです!