北海道大学にはなぜ陸軍士官学校の資料が多く所蔵されているのか?入手ルートや寄贈者について知りたい。 なぜ「札幌農学校」に所蔵なのか?

図書館の蔵書構成はその図書館らしさであるのは当然として,図書館の歴史でもあり,目指している方向でもあります*1。そして往々にして,特別コレクションでも無い限り,なんでこんなに妙に充実しているんだろう(逆に,していないんだろう)? と首をかしげることもあるくらい謎なものである場合もあります*2専門図書館はもともと専門なので,すばらしいコレクションや蔵書構成があって当たり前です。
この質問を受けたとき,最初になんの資料を見ようか,少し悩みます。キーワードの選定とかそういう次元ではなく,検索戦略をどう立てようか,という点で悩みます。たぶん。レファレンス・ライブラリアンとしては,このような質問にはさくっと最初の一手が思いついてほしいところです。考えられるのは,団体史の類か,団体要覧の類でしょうか。
回答を見てみます。

(1)館内所蔵の『北大百年史』を調査。
 ⇒1876年(明治9)に北海道開拓の人材育成のため、北海道大学の前身である札幌農学校が開校との記述あり。
 ⇒年表(p13)の1889年(明治22)に兵学科を開設との記述あり。
 ⇒屯田兵育成のため陸軍士官学校予科としての機能があったと思われる。
(2)北海道大学に資料が多く所蔵されているのは、軍事関係の教科書の一部として購入されたものがそのまま蔵書としてあるのではないか。
(3)依頼者に調査報告。依頼者、北海道大学への参考調査は希望されず、この調査で良いとのこと。終了。
(※丸囲み数字は引用時に括弧付数字に変更した)

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000034318

この事例では,団体史の類である,『北大百年史』を調べています。北海道大学の前身である「札幌農学校」の学科構成から軍事・兵学関係の資料が多いという推測が可能だとしています。
個人的には蔵書構成の推測のための根拠としてはもう少し何かほしいかな,と思います。担当したライブラリアンも思ったのでしょうか,北海道大学への照会をするか質問者に確認しています。こういうのは非常に大事ですね。「この資料ではここまでわかった。これ以上は,○○に照会してほしい」というところまであると,レファレンスの回答としてより質の高いものになります。もちろん,それは質問者が決めることであって,図書館は選択肢の提示にとどめなくてはなりません。この事例ではそのあたりまで,きちんとできていてすばらしいと思います。
北海道大学陸軍士官学校関係の資料が多いというのは,nachumeはこの事例を読むまで知りませんでした。勉強になりますね!

*1:ついでに,公共図書館だと如実に予算具合がわかってしまうという。

*2:うちだけだったりして……