宮崎のマンゴーはいつごろから作られるようになったのか。

なにかと話題の宮崎のレファレンス事例を取り上げてみようと思います。
まずは回答から。

「M-MOTION Vol.56」1997.6(JA宮崎経済連)及び、「I LOVE みやざき Vol。35」(2003)によると、マンゴーの栽培研究は宮崎県総合農業試験場亜熱帯作物支場で昭和51年より始まっている。その後昭和60年に西都市にマンゴー部会が発足し、昭和61年に植栽されている。なお、宮崎におけるマンゴー栽培の技術的なことでは、「つぶやき(マンゴー編)パート2」(M書庫/6258/7-2)に詳しい。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000027867

『I LOVE みやざき』は宮崎県の広報誌でしょうか。NDL-OPACをひくと,すでに廃刊となっているようです。『M-MOTION』は宮崎経済農業協同組合連合会(経済連)の雑誌のようです。こちらの雑誌は国立国会図書館の所蔵は無い模様です。公立図書館には地域の資料があります。地域資料はなにも藩政時代からの歴史書や絵図・地図だけではありません。
このように,地元のことは地元の資料が詳しいということで,検索戦略を立てるときに地域誌を探すというのはレファレンスの担当者は覚えておくべきです。
この事例では,地域資料を活かして,マンゴー栽培の開始に関する資料を提供している点,そしてさらに栽培技術に関する資料を紹介している点も評価できます。
農業が産業になっている地域だと,このように新しい栽培果実や品種がいつ頃から始まったのか,あるいは自分でも栽培したいので資料がほしいなどというレファレンスを受けることがたまにあります。
そのようなレファレンスに対して,地域の農業団体や県・市町村の農業主務課の資料をきちんと提供できるかどうかが重要になってきます。そして,栽培に関しては技術書とともに,県や農業関連団体などの機関の相談窓口を紹介すること(レフェラルサービス)も視野に入れるべきでしょう。このような質問は,例えば北海道の図書館で回答するのは難しいと思います。だからこそ,このようなレファレンス事例集に登録されているとありがたいのです。
少し堅苦しいのですが,公立図書館の根拠である図書館法には図書館奉仕についての条文があります。
図書館法第3条には「図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望にそい、更に学校教育を援助し得るように留意し、おおむね左の各号に掲げる事項の実施に努めなければならない。」と規定され,各号の一番最初には「一  郷土資料、地方行政資料、美術品、レコード、フイルムの収集にも十分留意して、図書、記録、視覚聴覚教育の資料その他必要な資料(以下「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。」とあります。
郷土資料や地方行政資料というのはその地方で出版された刊行物です*1。その地方で出版された雑誌や行政資料はその地方の図書館で収集保存し,利活用に供することが求められています。
レファレンスに関しても同様で,そういった地方出版物を整理し,問い合わせに対して,適切な資料を提供しなくてはなりません。
公立図書館は本来的に地域資料を収集保存し,利活用する機能をもっているため,おのずと蔵書にその地域の特性が現れます。「地域のことを調べる時には図書館へ行こう」ということが自然と暮らしの中にみえるといいな,とnachumeは思っています。そのためにも,図書館側としては,「図書館には資料がある」という当たり前のことを当たり前に実践しなくてはなりません。当たり前のことは案外難しいのですが,粘り強く地道にやっていきましょう。

*1:納本制度があるとはいえ,国立国会図書館ですら地方出版物となると網羅できていない現状があります。