市で作成する刊行物の中で、女性のイラストに添えるセリフに「〜わよ」「〜よね」などの語尾は用いない方がよいのか。その根拠となるような資料があるか。

前回に引き続き,国立女性教育会館作成のデータベースを利用した事例を紹介します。
まずは回答とプロセスです。

<回答>
国や各地方自治体で発行されている、男女共同参画の視点からの公的広報における表現のガイドライン類、及びガイドライン作成のための調査研究書などをあたったところ、以下の資料で話し言葉の語尾について言及していた。
『公的広報に男女共同参画の視点を : 男女共同参画の視点からの公的機関の広報ガイドラインに関する調査研究報告書』 (電通 : 電通総研 , 2000.10)  ※平成12年度、当時の総理府の委託による調査研究
p.13「女性の発言であることを示すために「○○よ」「○○だわ」など (略) 必要以上に性別を強調する表現は、公正な扱いに欠けるといえる。」
鳥取県行政広報物ガイドライン : 男女共同参画の視点に立った表現』 (鳥取県男女共同参画推進課 , 2002.3)
p.7に「避けたい表現」として「「…よ」「…だわ」、「…だ」「…だぞ」など合理的な理由なく女性・男性の発言であることを強調する表現」と例示。

<回答プロセス>
国立女性教育会館女性情報ポータル“Winet”(http://winet.nwec.jp/)「文献情報データベース」で「(ガイドライン or 手引*) and (広報 or 表現)」で検索。ヒットした資料を通覧する。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000032102

質問から検索戦略を立てようとするときに,キーワードはなんだろう? と少し悩みそうなレファレンスでは無いでしょうか? 刊行物の作り方に関するあんちょこがあれば別ですが,そんなに都合良くあるとも限りません。
アプローチとして,男女共同参画に関する何かだろうという見当と,広報に関する何かだろうという見当をすぐにたてられるかどうかだと思います。この点女性教育会館は専門機関ですから,強いです。専門図書館ではない館種のレファレンス・ライブラリアンはこういう事例をたくさん読んで,どういった資料群があるのかを押さえておくと役に立つと思います*1
事例に戻りましょう。Winetの文献情報データベースを用いて,書誌検索を行っています。この場合のキーワードの選択は言われればなるほどと思いますが,まっさらな状態でこれらのキーワードが浮かぶでしょうか? このあたりはセンスだと思います。Winetに収録されているレコードは,最低限女性に関する資料ですから,あとは刊行物の作り方に関する資料を見つければよいことになります。検索式を見ると「ガイドライン」と「手引*」の論理和と「広報」と「表現」の論理和の積集合です。なるほどタイトルには「〜〜に関するガイドライン」や「〜〜の手引」というものが多そうですし,あとは主題として,広報や表現という語を含むと「広報作成の手引き」なんて資料がありそうです。
この“ありそう”という感覚は非常に大事だと思います。自分がこのような資料を編集するとき,タイトルをどうつけるか,という想像を働かせてみると,キーワードの選択時のヒントになることがあります。
ちなみに「手引*」というようにトランケーションを用いている理由はわかりますか? 「手引」にも「手引き」にも両方ヒットするようにという配慮です。さすが。こういう検索が当たり前のようにできて欲しいところです。
この事例は,キーワードの用い方が非常にうまい例だと言えるでしょう。あっさりしていますが,この事例は勉強になりますよ。

*1:できれば館内の研修として位置づけて欲しいところです。nachumeの勤務する図書館では,先日館内整理日に,嘱託職員も含めレファレンス業務担当者の館内研修を行いました。実際にネットを使ったり,館内をあちこち回りながら実際に資料を手に取って,レファレンス事例を読むコツや,自館資料の特徴などを話しました。今回は主にビジネス支援関係の資料群ということで話をしていったのですが,正職員より嘱託職員の方に好評でした(正職員の中には期せずして図書館勤務になった方がいらっしゃる。こういう状況を何とかしたいのですが,なかなか……)。