戦争中の国語教科書に宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」が載っていたが、「玄米4合」のところが「3合」あるいは「2合」に書き替えられていたと記憶している。これを確かめたいので、当時の教科書が見たい。

宮沢賢治の3回目です。教科書の所蔵調査があるので,ちょっと大変かな,という先入観が。
でも,こういうレファレンスに答えるには,保存機能を持った図書館ならではです。1次資料にアクセスできるのは調査研究において非常に大事なことです。
回答より回答プロセスが詳しいので,そちらを引用します。

日本教科書大系』『国定教科書内容索引』『旧制中等教育国語科教科書内容索引』になし。
『「雨ニモマケズ手帳」新考』(小倉豊文 東京創元社 1978)p149に、戦後すぐの中学国語教科書に採用され、当時の米配給に合わせて「玄米3合」に書き換えられた旨の記述あり。
『国語教育史資料 2』によると最後の国定教科書「中等国語 1」(昭和22-23年)に採用。県立教育センター所蔵せず。県立文書館所蔵の「中等国語 1」には該当作品なし。
文教大学越谷図書館(昭和20年以降の教科書コレクション所蔵)のWebOPACを検索すると、昭和22.9版と23.2の修正版所蔵。内容確認依頼、修正版に該当作品あることを確認。複写依頼をした。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000031896

最初に用いた『日本教科書大系』『国定教科書内容索引』『旧制中等教育国語科教科書内容索引』はいずれも教科書に関して調査する際のレファレンスツールです。特に『国定教科書内容索引』は国語・修身・唱歌について探すときの定番ツールです。作品タイトルや著者から掲載教科書を引けます。教科書そのものを所蔵していればいいのですが,無ければ復刻集成された『日本教科書大系』などを用いて教科書の調査を行うことができます。『日本教科書大系』は都道府県立図書館クラスであれば大体所蔵しているので,近くの図書館に相談すればその図書館を通じて県立図書館に照会可能です(もちろん直接県立図書館に相談しても構いません)。
レファレンスツールの解題はこれくらいにして,これらからすぐにはわからなかったとのことで,まず,「雨ニモマケズ」が教科書に掲載されるにあたって書きかえられたことと,戦後すぐの中学国語教科書であることを確認しています。「どの資料にどんな記述があるから,何をしらべたらいいのか」というのが調査の定石ですから,これは大事なステップです。
自館の所蔵に当時の教科書もしくは復刻教科書がなければ持っている機関をさがすのが次の段階です。教科書のコレクションは 教科書図書館東書文庫広島大学図書館 が有名です。なるべく利用者の便を考え,この事例のように,近隣の類縁機関を探す必要があります。この事例ではそのあたりもしっかり考慮されています。すばらしいです。