次の製品(緑茶飲料)の広告宣伝費を知りたい。(1)伊右衛門(サントリー) (2)お〜いお茶(伊藤園) (3)生茶(キリンビバレッジ)

少し遅めの梅雨入り。ジメジメしてムシムシする日が続きます。こんな日の休憩時,コーヒーもさることながら,熱いお茶をずずーっと頂きます。すっきりしますよ。
今回はお茶に関する資料を探します。何回か取り上げていますが,立命館大学提供の事例です。非常に参考になります。回答とプロセスです。

<回答>
広告宣伝費のブランド(製品)別投資内訳について、3社ともに情報を開示しておられず。
※キリンビバレッジ(株)のみ次のような情報をご教示頂く
→基盤ブランド(生茶午後の紅茶・ファイア・アミノサプリ)への広告投資額は、全体の約7割
   [2005.11.18]

<回答プロセス>
(1)有価証券報告書オンラインデータベース[@有報革命]にて検索
  →財務諸表>損益計算書−広告宣伝費(販売費及び一般管理費)という勘定科目はあるが、
    企業全体の費用
  →全文検索にて他のページに情報がないか調べるも、製品別内訳については記載無し
(2)年鑑・白書などを調べる
  →媒体別広告費、業種別広告費、企業別広告宣伝費ランキングなどはあるが、製品別の情報無し
(3)各社HPを検索するが、情報無し
(4)各社へ問い合わせ
 ・サントリー(株)・・・製品別内訳について、費用・割合ともに情報開示無し
 ・(株)伊藤園 ・・・情報開示無し。「決算説明会用資料」をHPにて公開されているが、製品別内訳は無し。
  ・キリンビバレッジ?・・・情報公開無し。基盤ブランドが全体に占める割合のみ情報を頂く。
(引用にあたって機種依存文字は改めた)

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000034257

資料を探す時は,資料の存在を確認→所蔵を確認という手順を踏みます。時には資料の確認が資料の存在を推定しながら,その存在を確かなものにしていきます。このときに使うものが,目録,書誌,各種データベース,インターネット上の情報などです。ありとあらゆる情報源から,資料へどのようにして辿り着くか,という点の道筋をうまく立てられることがレファレンス・ライブラリアンの腕の見せ所です。
この事例では,広告宣伝費を知りたいとのことですから,各企業が情報を公開しているかどうか,あるいは業界団体のようなところが調査していないか,という予想が立てられます。それに基づき,ここでは,有価証券報告書を探しています。「@有報革命」というのは有価証券報告書や財務情報を調べられるデータベースです。企業や大学図書館などで契約していることが多いと思います。有価証券報告書を調べるツールとしてはほかに,金融庁の提供する「 https://info.edinet.go.jp/EdiHtml/main.htm 」があります(無料で使えますが,収録企業が@有報革命に比べて少ないです)。
最近ではIR情報として財務諸表を企業のWebサイトで公開していることも多いので,丹念に探せば有価証券報告書はオンラインで割と手に入ります。
ただ財務諸表からは,その企業の経済活動が見えるとはいえ(と言っている人も多いですよね?)具体的な商品にいくら広告費をかけたか,などということはわかりません。備考欄に書くにはいずれの企業も商品が多すぎますし,そんな情報はあまり記載されません。レファレンス・ライブラリアン有価証券報告書の見方についてはまた機会を改めることにします。
個々の企業の情報から探すことが難しそうであれば,業界情報をあたります。通常そういう資料は年鑑類として図書館に備え付けられています。広告業界の年鑑としては電通の『電通広告年鑑』が有名です。
具体的な資料名は出ていないものの,おそらくこのあたりの資料を調べたのだと思いますが見つかっていません。となると,直接聞いてみる,が残った手段です。もちろん,いきなり直接聞くのではなく,十分に公刊資料やインターネット上の情報源を探した上で,問い合わせます。
結果的にキリンビバレッジから一部教えてもらったとあります。情報公開をしていない企業もありますね。公刊資料やネット上から探しきれなかった場合,そもそも公開されていない情報の可能性もありますので,このように問い合わせても必要な情報が十分に入手できないことが多々あります。しかし,逆に,十分に入手できないということがわかりますので,元の質問者は自分の調査研究について次の一手を考えることでしょう。
図書館は資料の入手も,入手不可についてもある程度わかります。
資料の存在について,ここまで徹底して調べるというのは本当に頭がさがります。立命館大学は非常に良質の事例データを提供していますので,事例を読むだけでも勉強になります。
参考までに,当「レファ協ほめまくり」で取り上げた立命館大学提供の事例です。

どの事例もすばらしいですよ。