緑茶の効能に関する資料を紹介してほしい。

食品の栄養素,あるいは効能について調べたい,と思うことはよくあることです。実際に調べるところまで行動するとなるとなかなか億劫になってしまいますが……。図書館ではこんなことも調べられます。ただ,手にした資料が果たしてどれだけの信頼性を持つかという判断は別に下さなくてはなりません。
ともあれ,回答と参考資料です。

<回答>
緑茶に関する資料は、食品・料理の分類(596.7)や食品栄養学の分類(498.5)に多数あるが、ここでは食品栄養学に分類された、比較的新しい資料を紹介する。
資料1:専門書。各章ごとに参考文献あり。
資料2-3:比較的平易な文章で書かれている。
資料4:「緑茶カテキンの薬理作用とその応用」(山根哲郎著)
資料5:p.311-327「緑茶」に関する記述あり。巻末(p.336-343)に「民間茶のおもな効能」一覧あり。
また、[NDL-OPAC 雑誌記事索引]を、<日本茶×効能><緑茶×効能><お茶×効能>等の語で検索すると、茶の効能についてのシリーズ記事を含め、17〜8件の記事がヒットする。

「健康食品」の面から見ると、国立健康・栄養研究所が提供しているサイト「「健康食品」の安全性・有効性情報」が詳しい。(http://hfnet.nih.go.jp/ 最終確認日:2006年10月6日)
成分名、食品名などで検索可能。ヒトでの部位別有効性とその典拠となる文献、禁忌対象者や医薬品との相互作用などの安全性、総合評価等を見ることができる。

<参考資料>
【資料1】 茶の機能 : 生体機能の新たな可能性 / 村松敬一郎‖[ほか]編 / 学会出版センター , 2002.3 /498.5/5171/2002
【資料2】 お茶はなぜ体によいのか : カテキンパワーの秘密 / 黒田行昭‖共著 / 裳華房 , 1999.11 ( ポピュラーサイエンス 211 ) /498.5/5013/1999
【資料3】 お茶健康記 : あなたの知らないお茶ワールド / 山中宗直‖著 / 淡交社 , 1998.6 /4985/3439/98
【資料4】 船瀬俊介の民間茶薬効事典 / 船瀬俊介‖著 / 農山漁村文化協会 , 1998.9 ( 健康双書 ) /4983/3302/98
【資料5】 食と生活習慣病 : 予防医学に向けた最新の展開 / 菅原努‖監修 / 昭和堂 , 2003.1 /498.5/5279/2003

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000021621

「緑茶について」と一言だけポンと与えられたときに,どの書架を見に行きますか? 緑茶について書かれている資料は,料理の本にも栄養学の本にもあると思います。だから,どちらも見たほうがいいですよね。でも,どちらかといえば,栄養学かな,という重きの置き方も大事です。
この事例では,栄養学に分類された資料を紹介していますね。そして,忘れてはいけませんが,医療情報や健康情報はその情報がいつのものかをかならず確認すべきです。レファレンス・ライブラリアンとしては無意識のうちに,確認しているはずですが,念のため。
雑誌記事を探すときに用いた検索式はとくにひねったものではなく,素直に,「日本茶」「緑茶」「お茶」など緑茶の類義語と「効能」を掛け合わせています。
食品の効能については,科学的に実験が行われ根拠がある程度明確なものから,どんな実験をしたのかよくわからない程度の根拠があるものまで,幅広く世の中には存在します。「あるある大事典」ではありませんが,実験の捏造なんてこともあります。
図書館にある資料だからといって,すべて正しいとされるものともかぎりませんので,先に述べたように,資料に対する信頼度の判断は別に行います。ただこれが言うは易く行うのが難しいのですが……。
レファレンス・ライブラリアンは当然ながら,一冊の資料だけを提供することはなるべく避けるべきでしょう。一冊しか資料がない場合は,その資料に行き着くまでのプロセス(どのような検索手段をつかい,どのような資料にあたってみたのか)を同時に提供すべきです。そうすることによって,レファレンスの追試が可能になります。
この事例では,図書資料以外に,雑誌の記事やインターネット上のデータベースの紹介も行っています。これは,複数の情報を提供することの一つです。独立行政法人国立健康・栄養研究所のような専門機関の作成するデータベースもひとつの情報源としていいでしょう。
ちなみに,この国立健康・栄養研究所の「健康食品の安全性・有効性情報」はかなり有用なデータベースです。食品や含まれる素材(この事例だと,「茶」や「カテキン」など)から様々な情報を得ることが出来ます。また,その情報には情報源がついていて,参考文献がわかります。情報源によってはPubMed(世界最大級の生物医学関係文献データベースであるMEDILINEの検索エンジン)へのリンクがはってあり,論文の書誌事項や抄録,場合によっては電子テクストも入手できます。
「緑茶は体にいいよ」などということは日常よく耳にします。どこでその情報を仕入れたのかと聞くと,テレビや雑誌・新聞が多いのですが,それらメディアはどこで情報を仕入れたのかをもう少し伝えてくれるといいのになぁと思います。番組を見た人,記事を読んだ人が自分でその典拠にあたることができるような環境には,情報を組織化して利用に供するライブラリーが必要です。図書館は本来このような目的も持っているはずです。自己責任論とセットで情報へのアクセス手段が確保されなくてはなりません。図書館の持つ情報提供という機能から,正確な健康情報へのニーズに応えようとさまざまな取り組みをしている図書館があります。図書館の中の人は,そういった情報提供という側面も考えていきたいですよね。