海外の年金制度について書かれている資料はあるか。

ニュースなどで話題のことを自分でも調べてみようと図書館に来る方は思いの外いるものです。レファレンスカウンターにいると,「ちょっと自分でも調べてみたくて」と言いながらあれこれ質問を寄せてくる利用者さんに,図書館を使ってくれてありがとうと感謝の念を送っています。
ここしばらく年金や介護に関する話題には事欠きません。
今回の事例は東京都立図書館提供で,年金の海外事情を紹介している資料です。回答と参考資料を引用します。

<回答>
資料1:米、英など11ヶ国別に年金制度、制度沿革がまとめられている。
資料2:英、独、仏、スウェーデン、米について現行制度の概要と最近の動向あり。
資料6:フィンランド、カナダの年金改革
資料7:イギリスの年金改革

<参考資料>
【資料1】 海外の年金制度 : 日本との比較検証 / 厚生年金基金連合会‖編 / 東洋経済新報社 , 1999.9 /364.6/5004/1999
【資料2】 厚生の指標 : 保健と年金の動向 50巻14号通巻789号 2003年11月臨時増刊 / 厚生統計協会 , 20031116 /コウセイノシヒヨウ
【資料3】 アジアの社会保障 / 広井良典‖編 / 東京大学出版会 , 2003.9 /364.0/5092/2003
【資料4】 高福祉・高負担国家スウェーデンの分析 : 21世紀型社会保障のヒント / 井上誠一‖著 / 中央法規出版 , 2003.3 /364.0/5086/2003
【資料5】 21世紀の公私年金政策 : 米国とスエーデンの最新動向 / 渡部記安‖著 / ひつじ書房 , 2003.12 /364.6/5042/2003
【資料6】 高齢化時代の経済と各国の政策 : 『The OECD OBSERVER』より / 経済協力開発機構‖著 / かもがわ出版 , 2001.8 ( OECDの提言 シリーズ3 ) /364.1/5018/2001
【資料7】 グローバル化福祉国家財政の再編 / 林健久‖[ほか]編 / 東京大学出版会 , 2004.1 /364.0/5102/2004
【資料8】 世界経済の潮流 : 中国高成長の要因と今後の展望、欧州にみる主要な年金改革-ドイツ スウェーデン 2002年秋 / 財務省印刷局 , 20021127 /332.0/52/2002-2

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000013526

ここで紹介されている資料には主要な各国の年金制度,特に引き合いに出されることの多い北欧の国についての資料が書かれています。

このサイトで取り扱うのはあくまでもレファレンスですので,押さえておきたい資料について見ていきたいと思います。
その前に,これらの資料への辿り着き方はなにも難しいことをやる必要はなく,社会保障関係の書棚をブラウジングすることや,キーワード「社会保障」「年金」「保険行政」などから目録をひくことなどで対応できると思います。そのほか,雑誌記事索引などで同様のキーワードから記事を探すことができるでしょう。
提示された参考資料に,「厚生の指標 : 保険と年金の動向」がありますが,これはレファレンス・ライブラリアンとしてはぜひ頭の隅に浮かべて欲しい資料です。「厚生の指標」という主に旧厚生省所管の諸々の情報が掲載される月刊の雑誌があります。この雑誌の臨時増刊号として,年に一度11月頃に「保険と年金の動向」という号が出ます。これは特に社会保障に関係する年金や保険の統計を集めたものですが,単に統計だけが載っているわけではなく,様々な制度についての解説も載っているのです。いわゆる年鑑としても利用価値を見いだせます。
この「保険と年金の動向」号のみを継続して購入している図書館もありますので,「厚生の指標」を継続受入していない図書館でも諦めずに探してみると入手できるかもしれません。
また,この事例では触れられていませんが,「厚生労働白書」にも各国の年金制度が紹介されています。レファ協には北九州市立中央図書館提供の イギリスの基礎年金額は、いくらですか? という事例があり,これによると,

『厚生労働白書 平成15年版』に年金制度の国際比較として日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデンの年金制度の概要が紹介されています。イギリスについては、老齢年金平均受給額(月額)は基礎年金、単身:289ポンド(47,400円)夫婦:462ポンド(75,700円)とあります。
また、「厚生の指標」臨時増刊号の『保険と年金の動向 2003年』に主要国の年金制度としてイギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンアメリカの年金制度の一覧表があります。
詳しいイギリスの年金制度については、『先進諸国の社会保障 1 イギリス』や『海外の年金制度』という本があります。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000029562

とのことです。こちらの事例でも「保険と年金の動向」を資料としてあげています。
年金事業を所管する厚生労働省の施策や事業報告,調査等は「厚生労働白書」や「厚生の指標」を通じて得ることができます(一般に厚労省の統計調査の報告書等出版事業は,主に厚生統計協会が行っています。厚生労働白書はぎょうせいが市販本を出版しています)。
意外なことに(制度設計などの企画を担当するのも厚労省社会保険庁だからそんなこともないか……),年金事業の海外制度の調査については学術研究以外にも,厚労省が行っており,一般に公開されている情報なのですね。
新聞やテレビなどでは,必ずと言っていいほど海外の事情を紹介しています。不思議なことに,そういう報道に接すると,海外の制度がとても良いものに思えてきます。それをそのまま受け止めても構いません。でも,少しでも気になることがあったら,自分で調べてみるという癖をつけるのも悪くないと思います。「ちょっと調べて」何かものを言う(書く)ということを意識してみると,単にメディアの情報を受け止める以外の何かが見えると思います。「ちょっと調べる」時に,インターネットや図書館というのは非常に役に立ちます。
どの図書館にも多かれ少なかれ白書の類がありますし,年鑑の類(ここでは「保険と年金の動向」)がなければ都道府県立図書館や他の所蔵館に照会してもらったりすることができます。
そういう意味で「ちょっと調べる」ということは図書館やネットが利用できれば,そう難しいことではないのです。
レファ協にはたくさんの事例があります。「ちょっと調べる」きっかけにレファ協が役立ちますよ。きっと。