チェコ、ハンガリー、スロバキアの基本的な社会保障・医療・福祉施策の状況に関する資料を紹介してほしい。

世界各国の社会保障制度を調べるシリーズ第2弾。今回は中欧・東欧の国々です。
国立国会図書館提供の事例です。さすがに資料が豊富ですね。

(【】内は当館請求記号)
 チェコハンガリースロバキアの基本的な社会保障・医療・福祉施策の状況に関する資料についてですが、世界各国の社会保障・福祉制度についてまとめた日本語の資料には、『世界の社会福祉年鑑』(旬報社 年刊 【Z47-B35】)2006年版、『各国の社会保障』(法律文化社 2003 【EG1-H20】)、『世界各国の社会保障制度. 1997』(国立社会保障・人口問題研究所 1999 【EG1-G64】)等があります。しかし、これら3点にはいずれもチェコハンガリースロバキアに関する解説は載っていませんでした。
ただし、『世界の社会福祉年鑑』2006年版の巻末にはチェコハンガリーの機能別社会保障給付費等の統計が記載されています。
世界各国を収録しているわけではありませんが、『地域福祉におけるパートナーシップ : ハンガリーにおけるNPO地方自治体』(横浜市立大学経済研究所 2003 【EG25-H22】)はハンガリー社会福祉分野のNPOについて詳しく解説しており、8〜11ページに社会福祉の「法的・制度的枠組み」に関する記載があります。
また、ヨーロッパ諸国の医療保障制度についてまとめた『欧米諸国の医療保障』(法研 2000 【EG131-G300】)の巻末資料(437ページ)には、ハンガリー医療保険制度の概要が掲載されています。

 このほか、チェコハンガリースロバキア社会保障制度等に関する日本語の雑誌記事・論文についてNDL-OPAC雑誌記事索引を検索しましたところ、次のような資料が見つかりましたので、ご参考までにご紹介します(スロバキアに関するものは見つかりませんでした)。

チェコ
●「世界の年金--歴史としくみ(22)チェコ」(『ねんきん』 42(6) (通号 495)  2001.6  2〜5ページ 【Z6-172】)

●「チェコの老齢年金制度 (特集:ロシア・東欧における社会保障の動向)」(『海外社会保障研究』 (144)  2003.Aut.  29〜41ページ 【Z6-484】)

ハンガリー
●「海外研究 ハンガリーにおける体制転換と社会保障改革」(『週刊社会保障』 55(2135) 2001.5.14 54〜57ページ 【Z6-272】)
体制転換に伴う社会保障政策の変革を見ることにより、ハンガリー社会保障の現状を概観しています。

●「ハンガリーの社会動向と福祉レジーム (特集:ロシア・東欧における社会保障の動向)」(『海外社会保障研究』 (144)  2003.Aut.  4〜13ページ 【Z6-484】)
共産主義時代の福祉レジームやポスト共産主義時代の福祉政策の推移等をまとめています。

●「世界の年金--歴史としくみ(21)ハンガリー」(『ねんきん』 40(9) (通号 474)  1999.09 20〜23ページ 【Z6-172】)老齢年金に関する記述が中心ですが、冒頭でハンガリー社会保障制度の歴史について簡潔に解説しています。

●「ハンガリーの年金制度 (調査研究シリーズ(諸外国における老齢所得保障について〕)」(『年金と経済』 24(3) (通号 95) 2005.10  66,106〜109ページ 【Z6-1666】)

●「ハンガリーの年金制度--その歴史と現状」(『金沢大学経済学部論集』 24(1)  2003.11 117〜151ページ 【Z3-1657】)

●「ハンガリーの年金制度改革--1998年以降の2つの時期に注目して」(『ロシア・東欧研究』 (31)  2002  219〜237ページ 【Z1-254】)

 一方、英語で各国の社会保障制度等について解説している資料には、“The International guide to social security : a country by country overview”(Kluwer Law International 1995 【EG1-A55】)があります。
同資料ではチェコ(109〜118ページ)・ハンガリー(199〜209ページ)・スロバキア(341〜350ページ)を含む世界各国の社会保障の概要を説明しており、Social security contributions(社会保障負担)、Social security benefits(社会保障給付)等について記載しています。

 また、“Social security programs throughout the world. Europe”(Social Security Administration, Office of Policy, Office of Research, Evaluation, and Statistics 【Z61-E231】)2004年版でもチェコ(63〜66ページ)、ハンガリー(104〜108ページ)、スロバキア(202〜206ページ)を含む欧州各国の社会保障制度についてまとめられており、Old Age, Disability, and Survivors(老齢・障害・遺族年金)、Sickness and Maternity(疾病および出産手当)、Work Injury(労働災害補償)、Unemployment(失業補償)、Family Allowances(家族手当(給付))の各項目について制度の概要を記しています。
同資料については、The Social Security Administration(米国社会保障庁)が運営する Social Security Online(http://www.ssa.gov/)内の Social Security Programs Throughout the World: Europe, 2004(http: //www.ssa.gov/policy/docs/progdesc/ssptw/2004-2005/europe/index.html)に Country Summariesが掲載されており、チェコハンガリースロバキアに関する同様の記述をHTML形式またはPDF形式で見ることができます。
なお、最新の情報についてはSocial Security Online(http://www.ssa.gov/)に同資料の2006年版が掲載されており、
Social Security Programs Throughout the World: Europe, 2006(http: //www.socialsecurity.gov/policy/docs/progdesc/ssptw/2006-2007/europe/index.html)で見ることができます。

 さらに、当館で契約しておりますオンラインデータベースSourceOECDを調べましたところ、
“Pensions at a Glance Public Policies across OECD Countries 2005 Edition: Country Studies”のチェコハンガリースロバキアの記述が見つかりました。これらの資料は当館で所蔵しております“Pensions at a glance : public policies across OECDcountries.”(Organisation for Economic Co- operation and Development 2005 【DE64-B1501】)
にも収録されており、チェコは105〜107ページ、ハンガリーは127〜129ページ、スロバキアは167〜169ページに記載されています。

 このほか、当館で契約しておりますオンラインデータベースEIU(Country Profile、Country Reportのみを契約)を調べましたが、チェコハンガリースロバキア社会保障制度等を解説した資料は見つかりませんでした。

(インターネットの最終アクセス:2007年4月11日)

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000035465

最初に提供している『世界の社会福祉年鑑』も定番と言ってもいい資料です。大学図書館都道府県立図書館であれば所蔵しているところが多いと思います。この年鑑はわりと新しい年鑑ですが,なかなかよくまとまっており,各国比較をするときに用いる資料としてはまずあたってみるとよいものです。
そのほか,雑誌記事索引を使って文献を紹介しています。このような制度比較のレポート類は専門誌に掲載されることが多いため,当然といえば当然ですが,ついレファレンスカウンターで対応していると,雑誌記事索引まで発想がまわらないことがあるので *1 ,意識したいものですね。実際に雑誌を所蔵しているかどうかはその次でいいのですから,まずはどれだけいろいろな文献紹介の手段をもてるか,がレファレンス・ライブラリアンの腕ですね。
それ以外にも,この事例では,インターネット上の情報や外国語資料まで紹介されています。バランスよく,且つたくさんの蔵書を存分に生かしていますよね。
そして,この事例でありがたいのは,前回も指摘したように*2,キーワードとして使えそうな語句が原綴と日本語訳が両方提示されていることです。
少し事例から離れて,レファ協の使い方の一つに,資料の選書に生かすというものがあります。
この事例で紹介された資料の中には,nachumeの勤める図書館に所蔵がない資料が多いです。こんな時に考えるのは,このような資料は自館の参考資料に必要かどうかです。必要であれば選書会議にかけるなどのアクションをとるべきですよね。レファ協の利用法の一つに,参考資料の選書に使う,というものもあるのです。具体的にどのような時に,どんな風に使っているか,がレファレンス事例からわかりますので,より選書作業が具体的になるのです。出版案内のカタログだけではわからない使い方の具体例がレファレンス協同データベースで手にはいるとなると使わない手はないですよね。
レファレンスというのはさまざまな図書館業務と密接に関わるものです。レファレンスによって資料を提供し,貸出冊数が伸びたり,あるいはより適切に利用者に答えられるレファレンスブックを用意すべく書架の見直しをはかったり,どのような質問が多いのかを分析することによって,どのようなニーズがあるのかを掘り起こし,図書館の運営に生かしたりと思いつくだけでもたくさんあります。
レファレンス協同データベースは使えば使うほど,いろんなことに使えると思います。もちろん,何かの調べ物に使うというのが第一義ではありますが,いま上述したような使い方もありますし,これは規模の大小にかかわらず,取り組むことができます。
レファレンス協同データベースは,図書館で働く人も,図書館を利用する人も,使うほどに,いろんな使い方を発見することでしょう。

*1:利用者と話をしながら検索したり書架を案内していると不思議なことにこのプロセスがすっ飛ぶことがあるのです。nachumeだけか……。

*2:世界各国の選挙年齢 - レファ協ほめまくり