農薬の分野で用いられる「バリデーション」という単語の意味を知りたい。

前回紹介した南京玉すだれの事例は,レファ協参加館がログインすると表示されるオススメ事例にも登録されていました。不覚にも,被ってしまいました。敢えて同じ事例を取り上げるときにはその旨を書いていたはずなのですが。それなりの回数ログインしているはずなのに,ぜんぜん気づかなかったのは注意力が無いんでしょうね……。
気を取り直して。図書館に寄せられる質問のうち,人文社会学系ではないもの(理工系)となると,割と多いのが農業関係の質問だと思います。統計を取ったわけではないので,あくまで個人的な感覚でしかないのですが。当然,それぞれの地域産業の差もあるでしょう。蔵書の規模もあるでしょう。nachumeは農業従事者がそれなりの割合を占める地域にいますので,そんなふうに感じるのかもしれません。
家庭菜園で何か作物を育てたいという割と気軽なところから,害虫に悩んでいるので何か対策を立てるための基礎資料がほしいなどというところまで,幅広い質問が寄せられていると思います。また,特に他の図書館からの照会もそれなりにあるように思います(nachumeは県立図書館にいるので)。
今回紹介する事例は国会図書館の事例ですが,質問者が公共図書館ですので,おそらく状況的に,それに近いのかなと思います。
回答を引用します(一部略)。

国立国会図書館東京本館科学技術・経済情報室所蔵の農薬関係参考図書のうち、
欧文索引のある以下の2点を調査しましたが、validationという用語は索引中に記載がありませんでした。( )内は当館請求記号です。
 『農薬科学用語辞典』宍戸孝〔ほか〕編 日本植物防疫協会 1994 374p (RB2-E101)
 『農薬ハンドブック 2001年版』農薬ハンドブック編集委員会編 日本植物防疫協会 2001 941p
 (Z43-2612)
当館が契約しているJDream(科学技術振興事業団の文献情報データベース)内のJSTPLUS(1981以降の科学技術全分野にわたるデータベース)を、英文標題 'validation'、和文標題 '農薬' で検索したところ44件の検索結果が得られました。新しい順に10件を以下に示します。

(…略…)

10件のうち、validationを「検証」と訳しているもの6件、「確認」2件、「バリデーション」 と「有効性」が1件ずつでした。農薬関係分野に限っても、validationに定訳語があるわけでなく、文脈によって訳語が変わるようです。
JDreamのアクセス日は2005年4月14日です。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000025125

プロセスは回答を見ればわかりますが,まず事典類を参照しています。このときに,闇雲に農薬関係のレファレンスブックを見るのではなく,「欧文索引がついているもの」という選択をしています。少し考えれば当たり前の選択ですが,つい手当たり次第に事典を引くより効率がいいです。レファレンス・ライブラリアンはレファレンスブックの凡例や索引がどうなっているか,を普段から意識しておきたいですね。
索引語に見つからない単語は,一般的な用語である可能性が高いです。それを証明するのはなかなか大変なのですが,ここでは,JDreamの科学技術関係のデータベースを引いて,使われ方をみています。文献そのものを探す以外にも,このような用語の使い方について調べることもできるのは覚えておいて良いと思います。当たり前ですが,なにもJDreamでしかできないわけではありません。各種文献データベースでもこういう使い方ができるものもあるでしょう*1
結果としては,validationを「検証」「確認」「有効性」などと訳しているようですね。心理学では「妥当性」という語が存在しています*2。ただ,厳密に言えば,これだけで農薬分野の用語ではないとも言えないのですが,それ以上突っ込んだ検証も難しいです。元の質問者がどのような意図で(文献がとりあえず読めれば良いのか,それとも,何か発表するために調べているのか,など)質問しているのかわからないので,何ともなりません。この辺は協力レファレンスの難しいところですね。nachumeもレファレンスの相当数が協力レファレンスですので,このあたりのもどかしさを感じることがよくあります。
文献データベースも通常の使い方以外にも,このような用語の使われ方を調べるツールにもなりうるということを覚えておいて損はないと思います。さすが国立国会図書館ですね!

*1:ちなみに,JDreamを使える図書館は大学図書館専門図書館公共図書館では,都道府県立・政令指定都市クラスの一部だと思います。

*2:オンライン学術用語集で確認できます http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi