三好町の夏祭りのいいじゃん踊りの由来が知りたい。

前回紹介した事例にある秋田の竿燈のように長い歴史に裏付けられた祭りとは対照的に,今回紹介する事例は,前回とは異なる,いわば新しいタイプの祭りです。
いいじゃん祭りは,愛知県の三好町で行われている祭りで,ここで踊られるのがいいじゃん踊りです。レファレンス事例の回答文中にもありますが,振り付けを南流石,唄を東京バナナボーイズが担当しています。東京バナナボーイズというだけでツボな人もいることでしょう。
回答と回答プロセス,参考資料,備考から引用してみます。

<回答>
1993年7月10日に発表された。
初回は1993年8月22日に開催。
三好いいじゃん踊りは、三河弁の「いいじゃん」にちなんで名付けられた新しいお祭り。各地区で開かれていた納涼盆踊り大会を、もっと気軽にたくさんの人が参加できるようにモデルチェンジされたもの。
平成8年には、1曲追加された。「JUST ROLLIN じゃんだらりん2」
開催は、「三好大提灯まつり」とあわせて行われる。
テーマソングは「じゃんだらりん」
作詞・作曲・唄 東京バナナボーイズ
振り付け 南流石

<回答プロセス>
郷土資料コーナーにて三好町の歴史について調べる。
三好町の広報にも掲載あり。

<参考資料>
「写真でつづるふるさと三好」1998(A232.5 ミ)

<備考>
広報みよし2005年2月1日号 通巻845号に特集記事在り(p.14)
踊りの振り付けのビデオは三好町立中央図書館、三好町役場商工観光課にて所蔵。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000020458

今回も地域のお祭りに関することですので,公共図書館のレファレンスとしては,地域郷土資料を主題としたものと類型化することができます。
地域郷土資料を調査するときに有効なのが書架ブラウジングです。三好町の図書館は設立から約30年,所蔵資料がおよそ13万点ですので,それなりに資料は集めているものと思いますので,郷土資料コーナーで探せば何かしら資料が得られるはずです。
そして,地域のお祭りに関するものですから,当然図書館としては関連する資料をあらかじめリストアップしておくなど,自館作成のレファレンスツールもきっとあると思います。
提供された資料は,回答にぴったりの資料がありました。写真付きというのがいいですね。
回答プロセスをみてもらうとわかるとおり,回答に町の広報誌も利用しています。地域の情報が満載の広報誌は図書館にはなくてはならない資料です。ただ索引がないことがほとんどですので,図書館で索引をつくるか,あるいはさまざまな探し方をライブラリアンが身につけておくか,など対策が必要です。
前者はあるに超したことがないというのが現実ではないかと思います。人手がない,忙しい,などで,欲しいけどねぇ……なんて話していることが多いかもしれません。形にこだわらなくていいのなら,受入時に目次をコピーしてファイリングする,テキストファイルとして電子化しておくなど,やれるだけでもやっておくといいと思います。
後者はいくつか考えられます。
この事例の主題である「いいじゃん踊り」はいつ頃発表されたかという時期は様々な資料から特定することが可能です。探し方としてはこのようにおおもとがいつなのか,を過去の新聞や記憶から絞り込むというのがオーソドックスです。ただ記憶というのはさかのぼればさかのぼるほど曖昧になって,平気で10年程度のずれが生じることがあります。今回のいいじゃん踊りは15年くらい前ですから,記憶をたどってもそれほどずれは生じないと思います。
ほかに考えられる手段としては,夏祭りなので,夏に発行される号をみていくというものです。当たり前ですが,広報誌は事前広報(宣伝)と事後広報(報告)の機能を持ちますので,特定の時期に絞って調査をするというのは案外有効なのです。
索引がない資料にどうやってアタリをつけていくか,というのは地域郷土資料をあつかう上で非常に重要な視点となります。
今回は触れられていませんが,まちづくり関係の行政資料にも関連する資料があるかもしれませんね。
この事例のほめポイントとして忘れてはならないことは,ビデオの存在もきちんと押さえていることでしょう。所蔵が図書館だけではなく,町の商工観光課にもあるという点も忘れず記述されています。本を提供して終わりではなく,さまざまな資料媒体の可能性を考え資料を提供しなくてはなりません。そのあたりもしっかりできていてすばらしいです。
まちの図書館をばかにしてはいけません。図書館は地域情報の集積とそれを利用し発信することができるのです!