子供がキレることと食事の関係。子供がキレるのは、食生活が関係あると聞いたがそれに関する本が読みたい。

「きれる子ども」という言葉は,いわゆる「切れ者」の意味ではなく,理性の歯止めがきかない状態のことを指すのが今日では一般的です。
今回紹介する事例をみると,「キレる」ということの考察が各方面から行われているのがわかります。レファレンスの回答としては,食生活との関係というのが条件ですので,そちらをどう捉えるか,がポイントです。
回答と回答プロセスです。

<回答>
雑誌「栄養と料理」1998年8月号 「キレる」子供のストレスと食生活を提供。

<回答プロセス>
「キレる」で検索。2タイトルそれらしき書名があったが、市内未所蔵。雑誌「栄養と料理」1998年8月号に関連記事あり。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000026770

実際に提供した資料は雑誌です。図書館にはたくさんの資料があり,本も雑誌もあります。このレファレンスでは,本ではすぐに提供できなかったけれども,雑誌に載った記事をきちんと検索して提供しています。これはレファレンスとしては当たり前のことですが,非常に重要なことです。つまり,その図書館に所蔵されていない資料でも,時間をかければ図書館同士のネットワークを通じて,大概の資料は手に入ります。が,レファレンス・ライブラリアンは,聞かれたときに提供できる資料は何か,をきちんと峻別しなくてはなりません。
少し前まで,雑誌の記事を検索するには少し労力がいりましたが,国立国会図書館雑誌記事索引が今では無料で使えます。規模の大小にかかわらず,どんな図書館でも雑誌記事を含めて,資料提供を行いたいものです。
これは,西東京市図書館の提供事例ですが,似たような事例が千葉県立西部図書館でも提供されています。せっかくなので,こちらも見てみましょう。

<質問>
食品(食べ物)とキレる子供たちの関係について書いてある文献を探している。

<回答>
“キレる子供たち”というのは、ここ数年来社会問題になっているものです。
まず、当館の図書について、「食生活」を件名に検索したところ、幾つか見つかりましたが、依頼内容に合致しませんでした。次に国立国会図書館雑誌記事索引CD-ROM版で「キレ」と「食」で複合検索をかけたところ、7件の記事を得ることができました。
詳細については以下のとおりです。
(1)『青少年の生活スタイルと精神的健康に関する研究―食生活のありようと「キレル」「むかつく」といった青少年特有の行動との関連』(斎藤誠一ほか著 食生活・文化及び地球環境科学に関する研究助成研究紀要(アサヒビール学術振興財団) 14 〔1998〕 p69-78)
(2)『新告発シリーズー11−キレる食事キレない食事』(週刊朝日103(19)[1998.5.1] p158 -161)
(3)『核心インタビュー鈴木雅子―食生活の悪い子どもほどキレる』(鈴木雅子 著 現代(講談社) 32(7)〔1998.7〕 p140- 141)
(4)『夏休みから始めようー「キレない子供」をつくる食事』(週刊読売 57(33)[1998,7,19] p35-37)
(5)『子どもがわからないーキレない子を育てる食事と家』(朝日新聞社編 Aera 11(48)[1998.11.25] p113-131)
(6)『「キレる」中学生の問題に食の側面からアプローチ』(阿部裕吉著 明日の食品産業(食品産業センター) 1998(12) p3-19)
(7)『Q&A 食と健康の新常識 テーマ:ポリフェノール/キレる子ども』(高橋久仁子著 食生活 94(4)[2000.4] p40-43)
上記のうち当館所蔵のものは(5)及び(7)、県立他館所蔵のものは(2)から(4)です。また、図書については、県立3館での所蔵はありませんが、『キレるキレないは食で決まる』(祥伝社)、『その食事ではキレる子になる』(河出書房新社)などがあります。
(引用時にテキスト整形した)

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000004127

こちらは,食べ物について調べているということで,「食生活」を件名にして検索してみた,とあります。結果は思わしくなかったようですが,こういうプロセスの記述はいいですね。レファレンスの事例化にあたって必要な情報です。
こちらの事例でも,雑誌記事索引を利用して,資料提供しています。結構な件数がありますね。
さらに,せっかくなので,nachumeは,このレファレンスを受けたつもりで,先日始まった国立国会図書館の新サービス「PORTA」を利用してみました*1。検索フォームに「キレる (and) 食」を入力し検索してみると,今回紹介したレファレンス事例の他に,雑誌記事索引からヒットしたものがいくつか見つかりました。「キレる」だけで検索すると,いろんな分野の記事が見つかります。多いなぁ……。
今回も含めて,ここ数回はレファレンス協同データベースへの登録件数が10件程度の図書館を中心に事例を取り上げてきました。今回の西東京市図書館のように,図書館の蔵書をうまく利用している回答に出会えると,嬉しくなります。がんばってるなぁ,と応援したいです。
提供事例が多くても少なくても,それぞれになるほど,と思えるポイントがあります。レファレンス協同データベースは事例が集まれば集まるほど,データベースとしての威力を発揮するので,少しずつでもいいので,ぜひ参加館は登録してください。nachumeの所も少しずつ登録していきますので。

*1:PORTAが楽しいので,いろいろ遊んでいます。レファレンス協同データベースも連携してますので,事例の検索が非常に便利。片っ端から適当に検索してみると,何かが起こります。レファ協の想定する使い方以外の使い方が今後出てきそうな予感。いずれ項を改めて何かエントリを書いてみようと思っています。