沖縄県の食生活のデータを調べていて、高齢者の栄養摂取状況、食品の摂取状況、食事状況、食生活状況、ストレス、睡眠、休養の状態、生活習慣の状況が調べたい。国民栄養調査の『国民栄養の現状』以外に文献はあるのですか。

日本における食生活や栄養についてまとまった資料というと,真っ先に思い浮かぶのは『国民栄養の現状』です。この白書は「国民健康・栄養調査」という調査をまとめた報告書*1なのですが,元はといえば戦後の日本社会の状況下で,国民の栄養状態,身体状態を把握するためにおこなわれたものでした。現在では,食糧難による栄養状態をしらべるというよりは,どちらかといえば,生活と食,栄養,健康という生活習慣に関する項目調査にシフトしています。例えば喫煙者の割合,運動習慣のある人の割合などはこの白書から数値を得ることができます。
というわけで,調査研究の基本資料である白書ですが,この事例では白書はすでに調べています。白書の先にある資料は何か,という点について見ていきましょう。当然,栄養に関する主題じゃなくても応用ができます。
回答と回答プロセスを引用していきます。

<回答>
(1)沖縄県福祉保健部健康増進課のサイトに関連データがあります。URL:http://www3.pref.okinawa.jp/site/view/contview.jsp?cateid=80&id-5953&page1
(2)596.89/Nih『日本一の長寿沖縄の食生活』に各種データが掲載されています。
(3)本学所蔵和雑誌『日本食生活文化調査報告集8.9.17.20号』に沖縄の食生活に関する論文(参考文献一覧等)があります。
(4)498.59 特殊栄養 高齢者の栄養のところの書架を直接見てください。

<回答プロセス>
統計資料に沖縄県の食生活に関する資料なし
(1)沖縄県福祉保健部健康増進課のサイトに関連データあり
(2)596.89/Nih『日本一の長寿沖縄の食生活』に各種データあり
(3)CiNii検索 キーワード(高齢者/食/沖縄)で論文あり
(4)本学所蔵和雑誌
日本食生活文化調査報告集8.9.17.20号』に沖縄の食生活に関する論文(参考文献一覧等)あり
(5)その他 498.59 特殊栄養 高齢者の栄養の書架を確認

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000030459

白書は事前に質問者が確認していますので,それ以外のもの,ということで探していきます。
(1)から(4)まで提供された資料と,それに対応するプロセスが書かれているのをみてわかるとおり,図書館で所蔵している資料をまず探し,特に統計データについてはインターネットから得られる情報源もあわせて紹介し,記事索引のデータベースを使って提供できる資料をあげ,そして,書架ブラウジングを案内しています。
白書の先の資料といっても,なにか特別なやり方があるわけではなく,この回答プロセスにあるようないわばオーソドックスなやり方をきちんと実践することが大事です。
統計関係の資料で沖縄県のみをあつかったものは確認できないため,その代わりにネットで得られる情報を提供しています。これは「国民健康・栄養調査」の特徴を押さえた探し方と言えます。「国民健康・栄養調査」は都道府県知事(もしくは保健所を設置している市長・区長)が事務を行うことになっているので,調べたい都道府県もしくは市のWebサイトでその地域の統計が公表されることがよくあります。沖縄県だと,沖縄県の分をまとめて健康増進課が公表しています*2。このように,求める統計調査がどのような方法で集計されているかを押さえると,どこにあたったらよいかがわかることがあるので,統計関係のレファレンスにおいて覚えておくと,なにかの糸口になることがあります。もっとも,そんなことがわからなくても,「都道府県でなにかまとめて公表しているものはないか」とWebサイトを探してみるという方針を立てることは,レファレンス・ライブラリアンとしては必要なセンスです。
CiNiiは国立情報学研究所が提供する記事索引です。一部は本文も入手できますので,かなり便利なものです。検索に用いたキーワードもプロセス中に明記されていますので,これもレファレンスの回答として良い点だと思います。また,同じく回答プロセス中には参考文献一覧が付された論文のありかを記入しているため,似たような主題の時にこの事例をとっかかりとして,調査ができることになります。
この事例が栄養に関する主題の時以外にも役に立つと先に述べたのはこの事例の書き方にもよります。統計の探し方として,統計の特徴を知ることや,主題に関する文献一覧の付された資料を記入しておく,などこれは後から同様のレファレンスを行う際にも,似たような主題でちょっとだけ異なる場合にも,あるいは全く主題はことなるものの白書類以外までふくめた調査手法についてもわかります。
言うまでもなく,レファレンス事例はレファレンスの「事例化」を経たものであり,レファレンスの回答そのものではありません。レファレンスを事例化する意味は,後から利用可能なものにする点にありますので,今回紹介した事例はまさにこの事後利用を効率的に行えるものとして,非常にすばらしいと思います。

*1:平成14年までは「国民栄養調査」。調査結果の概要は 栄養・食育対策 |厚生労働省 から,全文は 厚生労働統計一覧|厚生労働省 からアクセスできます。

*2:この事例中のURIは現在(2007/10/26)では無効のようで,調査結果には 沖縄県健康増進課のサイト からアクセス可能です。