ゆるい法律(刑法)の本,ありますか?

レファレンスカウンターで「ゆるい本」といわれたら……。「??……ゆるい本?」と一瞬間があくはずです。そんな時のために(あるのか?),事前準備をしておきましょう。
回答と回答プロセスです。

<回答>
下記の図書がヒットし,案内した。
実際に「ゆるい本」か,本人に確認してもらうことにした。

1. 最新刑法「各論」がよくわかる本 : ポケット図解 : 日本一わかりやすい刑法の超入門書! / 中井多賀宏, 坂根洋輔著. -- 秀和システム, 2007. -- (Shuwasystem beginner's guide book).
2. 最新刑法「総論」がよくわかる本 : ポケット図解 : 日本一わかりやすい刑法の超入門書! / 中井多賀宏, 坂根洋輔著. -- 秀和システム, 2007. -- (Shuwasystem beginner's guide book).
3. 図解でわかる刑法 / 新保義隆, 大澤美穂子著. -- 日本実業出版社, 2006. -- (入門の法律).
4. はじめての刑法各論 : 法律をあなたの「お友達」の1人に / 尾崎哲夫著. -- 第5版. -- 自由国民社, 2006. -- (3日でわかる法律入門).
5. はじめての刑法総論 : 法律をあなたの「お友達」の1人に / 尾崎哲夫著. -- 第5版. -- 自由国民社, 2006. -- (3日でわかる法律入門).
6. よくわかる刑法 / 井田良 [ほか] 著. -- ミネルヴァ書房, 2006. -- (やわらかアカデミズム・「わかる」シリーズ).
7. 3時間でわかる刑法入門 / Wセミナー編著. -- 第2版補正版. -- 早稲田経営出版, 2005. -- (Wの法律入門シリーズ).

<回答プロセス>
「ゆるい」?
確認すると「わかりやすい」とのことだった。
OPACでキーワード「わかる 刑法」で検索した。

回答プロセスによると「ゆるい」は「わかりやすい」の意味だそうです。nachumeは初めて聞きました。そういう言い方があるのですね。
ためしに,NDL-OPACで「ゆるい (and) 刑法」とタイトル検索をすると,数件ヒットします。いずれも,本当に「ゆるい」本ではなく,「いわゆる『いきなり型』非行」*1の「ゆるい」とか,「いわゆる因果論的構成」*2の「ゆるい」といった「ヨミ」の形からヒットしている模様です。タイトルを見た限りでは,すくなくとも「ゆるい本」ではなさそうです。
レファレンス・ライブラリアンとしては,こんな時はどうやって資料提供をしたらいいでしょうか。
もちろん,「ゆるい」という語を「わかりやすい」という意をあらわす語に置き換えて検索します。この事例では「わかる」という語をキーワードにして,回答中にあげた資料を提供しています。この「わかる」以外にも「わかりやすい」や「入門」,「はじめての」なども候補になるでしょう。
レファレンスの回答としては,いくつかの資料を提供するところまでです。あとは,質問者が最終的に判断して,足りなければ他の資料をあたったり,自館の所蔵資料で不十分であれば,他館の目録を検索してみる,といった通常のレファレンスと同様です。質問の用語が多少わからなくても,それに動じず淡々と資料提供をこなす点はすばらしいですね。
レファレンスではレファレンスインタビューの重要性が語られますが,この事例をみると,その重要性を実感できるのではないでしょうか。レファレンス・ライブラリアンとしては,自分が聞いた瞬間に理解できなくても,調査にとりかかる糸口をどうにかして,見つけなくてはなりません。通常その作業は,レファレンスインタビューを通じておこなわれるものです。
この事例のように,自分がすぐに理解できなかった言葉をたくさん集めておくことも,それなりに意味のあることです。他の人の役に立つこともあるし,なにより,この事例作成日に「ゆるい」という言葉が「わかりやすい」という意味を表す用例として,存在していたことの証明になるのです*3
近畿大学中央図書館さんの提供事例では,このようなレファレンスインタビューの重要性をおしえてくれる事例をたくさん登録しています。「レファレンスインタビュー」をキーワードにレファ協を検索してみてください。なかなか面白い事例がありますよ。