国道53号線から高円地区を通って菩提寺へ抜ける参道沿い、三十一丁石のすぐ北側にある2つの石(石碑?)の由来を知りたい。

よく見ると道路沿いには多くの碑が建っています。道路標だったり,史実の記念碑だったりと様々です。最近だと古い地名を残そうと敢えて碑を建てている地域もあります。歴史的な碑には解説も脇に添えられていることもありますので,由来や由緒がわかるのですが,この事例では,そんなこともなく,単に石碑らしい石があったので調べたいということらしいのですが……。
回答です。

当館の資料に記述が見られなかったため、町文化財保護委員にたずねたが、はっきりしたことはわからなかった。委員を通じて土地の所有者に照会したところ碑の類ではなく、昭和50年代の参道拡張工事の際、掘り起こされた自然石であり、私道と公道の境界として置いたものである、とのこと。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000021281

図書館ですから,当然図書館の資料でまずは調査をします。この事例ではあっさりと見つからなかったと書いてありますが,簡単に見ておくべき資料をnachumeなりにあげておきます。
この石碑などをひっくるめて板碑と呼ぶことが多いですので,調査の時には「碑」「石碑」など質問そのものから得られるキーワード以外に「板碑」を加えることを忘れないようにしたいもの。板碑などは昔から調査が行われているため,出版年をさかのぼってみることも場合によっては有効です。自館では蔵書が限られているという場合は,公立図書館であれば都道府県立図書館やもしくはその他資料館や博物館へ協力レファレンスを依頼することも視野に入れて,利用者と話をしていくことになろうかと思います。
とりあえず最初の段階で見るのはその当該地域の市町村史(誌)でしょうか。市町村史には当該地域の歴史を知るために欠かせない資料ですが,その地域に伝わる文書や民俗芸能,民話など多様な情報が収録されています(もちろんどの市町村史にも必ず掲載されているとは限りません)。市町村史本体とは別に「資(史)料集」とか「別集」といった書名で本体とは別に刊行されている場合もありますが,まぁ大ざっぱなくくりとして市町村史(誌)を見てみるというのは,とっかかりとしては有効かと思います。
さらに,歴史的な石碑であれば文化財指定を受けている可能性もありますので,文化財調査報告書の類を捜してみる,というのも調査のプロセスに入れておきたいところです。調査報告書以外にも,その地域の文化財関係を紹介している資料もありますので,その辺を見ていくことになろうかと思います。
ここまでで調べがつけばいいのですが,なかなかそんなわけにもいかず,見つけられないとなったときの対応ですが,他の機関に照会するというのがあります。これが今回の事例のポイントです。ここでは町の文化財保護委員会に照会し,石がどのようなものであるかを尋ねています。結果わかったことを図書館は利用者に回答しています。結果的には土地境界の目印だったのですが,このように専門の機関に照会することをレフェラルサービスといいます。図書館の蔵書だけでは解決がつきにくい類のものであっても図書館を起点として,様々な機関への道しるべとなることができるのが図書館のすごいところだと思います。事例中の文化財保護委員会では,土地の所有者への確認までやってくれたとのことです。図書館ではここまではできませんので,専門機関ならではですね。
この事例では,町の文化財保護委員会が回答を図書館へ戻していますので,質問者は図書館とだけ話をすれば解決に至ります。が,機関によっては,直接利用者に出向くようにいったりしますので,回答を得るまでにあちこちに足を運ぶ必要があるかもしれません。
図書館をきっかけに各種機関を利用できるというのは,図書館が本来的に持っている機能です。これが機能していくと,今以上に地域の中核施設になることが可能だと思います。この事例のように,他機関へ照会し,図書館が地域情報の起点となり得る可能性を示す事例がたくさんあるといいなと思います。