ベートーヴェンが書いた遺書があるという。その全文があれば読みたい。

図書館システムの更新にあわせて,仕様確定等の作業に追われているnachumeですが,今日だけは残業もせずにコンサートに行ってきました。ピアノソロコンサートです。ベートーヴェンソナタのみというある種レアなプログラムです。ピアノってすごい楽器ですよね。改めて思いました。
というわけで,ベートーヴェンに関する事例をいくつか紹介したいと思います。今回の事例は有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」です。全文を読みたいという要望はこれに限らずよくあるタイプのレファレンスだと思います。「日本語訳のもので」とか「原文で」などと条件が付される場合が多いのですが,この事例では,日本語のものを全文読みたいということのようです。
回答を引用します。

ベートーヴェン大事典』(平凡社)の「第5章 伝記および音楽に関する資料」のp93-97にベートーヴェンが「ほとんど自殺したい気持ちになったとき絶望の極みのなかで書かれた,1802年のいわゆる<ハイリゲンシュタットの遺書>」という説明があり、全文掲載されている。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000033462

ベートーヴェンの遺書」を探すときに,「ハイリゲンシュタットの遺書」という変換がレファレンス・ライブラリアンの中でできるのであれば,当然探しやすくなります。が,わからなくてもどうにか辿り着かなくてはなりません。
ベートーヴェンのように有名な人物であれば,どの百科事典類にもとりあえずの情報を仕入れることはできるでしょう。
また,専門分野の事典類ということで,音楽事典,あるいは,この事例でも用いられていますが,『ベートーヴェン大事典』などを最初に手にとってもいいでしょう。作品解説や生涯の略伝について情報を得ることができます。特に,特定の人物を取り上げた事典はこの手のレファレンスに重宝します。
いずれにせよ,「ハイリゲンシュタットの遺書」というキーワードには容易に辿り着くことと思います。
この事例では『ベートーヴェン大事典』に遺書の全文が載っていたということで資料が紹介されています。
他にも,「ハイリゲンシュタットの遺書」が掲載されている日本語資料はいくつかありますが,個人的にすぐに思いつくのは,『ベートーヴェン書簡集』です。タイトルの通り書簡を集めたものですが,岩波文庫らしい硬派な作り(というのでしょうか)となっています。かなり前の出版なので,書店で入手は難しいと思います。図書館で見てみてください。
日本語以外のものを入手したとなった場合でも,インターネットで検索すると原文でも入手可能なものがあります。出典を明記しているものもありますので,出典をたよりにその所蔵機関を探していくのもいいでしょう。
この手のレファレンスには,テクストクリティークという問題がついて回りますので,質問者がどの程度の資料を求めているのかをレファレンスインタビューを通じて把握することが大事です。回答時には,必ず複数の資料を調査し,テクストの異同に注意することを忘れないようにしたいものです。そこまで求める場合は,専門図書館大学図書館での話になるかもしれませんが,公共図書館でもこの姿勢は忘れることなく,利用者の調査研究に役に立つレファレンス回答をおこないたいものですね。