「仰げば尊し」が卒業式の歌として使われるようになった背景や理由について知りたい。

3月になりました。各学校では卒業式が行われます。早いところではすでに卒業式が終わった高校もあるようですが,卒業式で歌われることが多い「仰げば尊し」についてのレファレンスをご紹介。
まずは回答と回答プロセスです。

<回答>
『近代日本音楽教育史 2 唱歌教育の日本的展開』『近代教育の天皇イデオロギー』に詳しい記述あり。これを提供する。

<回答プロセス>
日本教科書大系 近代編 25 唱歌』によると、最初の音楽教科書「小学唱歌集」(M17)に収録されている。
『明治事物起源』によると、東京音楽学校第1回卒業式演奏の中で箏により演奏されている(M18.7)。
『明治ニュース事典』によると、福岡県瀬高高等小学校の卒業式で歌われている(M22.7)。
以上のような記述はあるが、背景や理由の説明なし。
NDC分類から〈教育史〉〈唱歌〉に関する資料を更に調査すると、『近代日本音楽教育史 2 唱歌教育の日本的展開』『近代教育の天皇イデオロギー』に詳しい記述あり。これを提供する。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000032590

回答プロセスを読むと,回答に至までのアプローチ方法がとてもすばらしいです。
この質問は「「仰げば尊し」が卒業式の歌として使われるようになった背景や理由」を探しているので,最初にどう動くか,と考えると私なら「教育史」を中心に資料を探すだろうと思います。そこで見つかった資料で満足してしまうかもしれません。
そういったアプローチ以外にも,この事例では採用されています。
日本教科書大系』で教科書に所収されていることを確認しています。さらに,『明治事物起源』や『明治ニュース事典』を引いて,いつごろ学校に「仰げば尊し」が存在していたかを特定しています。
これらの資料は,資料そのものとしては定番のレファレンスツールとして有名です。が,このレファレンスに使うという発想はあまり浮かばないかもしれません(nachumeには浮かびませんでした)。ところが,回答に至るプロセスとしては,すごく自然な流れができています。つまり,ある事実の確認があり,さらにそれについて言及されている文献を探す,という流れです。
レファレンスの回答には,この流れが非常に重要です。資料の提供に至るまでに行われたことが,回答プロセスによって,この流れが見えてくるので,この事例はすごく勉強になりました。こういう調べ方をするのはどのような調べ物にも通じるものだと思います。

少し個人的な思い出話になりますが,nachumeは卒業式に「仰げば尊し」を歌った経験はありません。式典なんだから校歌は当然歌いますよね。それ以外の歌となると……。小学校の時は記憶にないのですが「仰げば尊し」ではなかったと思います。中学の時は「贈る言葉」だったような(このチョイスも今思うとすごいな,と思います)。高校の時は……,多分校歌以外は何も歌わなかったんじゃないかと思います。高校の卒業式は出席すらしていません。大学の時はさすがにみんなで歌なんて歌わないですよねぇ……。