スコットランドのタータンチェックについての資料を見たい。写真入りで、歴史・由来などについて知りたい。

タータンといえばチェック柄で,スコットランドの伝統的な模様です。日本では服の生地以外にも,袋や包み紙などの柄としてもよく見かけます。
回答と回答プロセスなどを引用します。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000019307
<回答>
『新・田中千代服飾事典』に記述・写真あり。また、未所蔵資料だが「タータンの本」(Blair Urquhart編 チェック商会 1996)あり。この情報をあわせて連絡する。

<回答プロセス>
『英国を知る辞典』『イギリスの生活と文化事典』なし。『J-BISC』を検索したところ「タータンの本」(Blair Urquhart編 チェック商会 1996)あり。

<NDC>
衣服.裁縫 (593:9版)
図書.書誌学 (020:9版)
衣住食の習俗 (383:9版)

<事例作成日>
1997/11/29

事例作成日が1997年であることに注意が必要です。例えば,「J-BISC」はCD-ROM版の国立国会図書館の蔵書目録ですが,現在ではNDL-OPACの方が使い勝手はよいですから,使用頻度はそれほど高くないツールです。ですが,97年当時は電子化された目録で収録数が多いのはやはり国立国会図書館の目録だったので,随分活躍しました。
それはちょっと横に置いておいて,ここで紹介されている『新・田中千代服飾事典』はポイントです。服飾・ファッションに関する定番の事典で,項目数も多く,ファッション関係の歴史的事項なども書かれていて,非常に使いでのある事典です。ぱらぱら適当にめくって読むだけでも,面白いです。服に関係するレファレンスであれば,うまく活用したい事典です。この事典の初版は1961年の出版ですが何度か改訂した後,全面改訂した新版「新・田中千代服飾事典」が,1991年に出版されています。
レファレンスの回答としては,単に事典の記述を参照するのではなく,未所蔵であっても,資料の紹介をしている点は非常にいいと思います。当然,求めに応じて,購入の検討をするか,相互貸借の手続きをするかなども考えられます。また,スコットランドということで,イギリス関係の事典類も参照していることも,レファレンスとして必要なものです。
あえて,引用部分に,主題分類であるNDCを入れたのは,この事例の作り方が面白いと思ったからです。このレファレンスを分類しようとするならば,タータンの歴史的由来ということで,一般的には,383.1(服装. 服飾史)が付与されることが多いと思います*1。発想としては,近いところで,タータンということから衣服や裁縫に関係するとして,593という分類を付与することもわかります。ところが,それ以外に,020(図書. 書誌学)という分類も付与されています。これはなかなか面白いと思いますが,意図としては,重要なレファレンスブックがあるよ,という意味で付与されたのではないでしょうか。あくまでもnachumeの予想でしかないのですが,このセンスはいいと思います。分類やキーワードは,基本的にはレファレンスの内容による主題分類に関係するものが与えられますが,レファレンスを事例として活用するには,それ以外の視点も必要です。NDCの使用法の原則に則れば,人物情報を探したり,判例情報を探したり,統計情報を探したり,という調べ物を分類しようとすると内容によって,異なる主題が与えられます。例えば,農業統計は6類が,学校統計は3類が付与されます。ですが,ここに「統計調査」というキーワードなり,350(統計)というNDCが与えられるなどすると,主題を超えて,特定用途の調べ方という抽出ができます。これは事例を分析し,研修や勉強に生かそうとするときに,すごく便利なものになるのです。このあたりは,まだいろいろ検討する余地はあるのですが,館内で事例を作成するときに,ちょっと気をつけてみるといいかもしれません。*2
さて,少しタータンの話。タータンは日本で言えば家紋のような性格を持ち,一族には固有の模様があります。いろんな問題はあるようですが,タータンの登録制度もあります。nachumeは詳しくありませんが,ファッション関係の話は嫌いではありません。この事例を読んだときに,そういえばタータンの本があったな……という記憶を元に,書架をうろうろしていたら,果たして一冊の本を見つけました。

この本は面白いですよ。スコットランドの紹介や日本とタータンの関係などわかりやすく書いています。引用文献や参考文献をみても,かなり細かいところまで文献にあたっっていることがわかります。
話があちこちに飛んでしまいました。この事例で紹介されている資料は,ファションに関係することを調べるときに,何をとっかかりとしたらいいか,についてヒントとなってくれるにちがいありません。

*1:レファレンス協同データベースではNDCは3桁(要目表)までなので,実質的には,「383(衣食住の習俗)」が付与されることになります。

*2:この段落,うまくまとめられていません。現在nachumeが館内の事例を整理しようとしている時に,なんとなく感じている事を書いてみました。もう少しまとまったら,きちんとしたいと思っています。