江戸時代の花見の絵図、特に今の台東区のあたりの絵図を探している。

この時期になると,各所での桜の開花がニュースで話題になっていますが,この事例を見ると,花見は古くから存在していることがわかります。
回答と参考資料です。

<回答>
資料1、資料2、資料3などで、上野(東叡山)が江戸時代から花見の名所だったことがわかる。
絵図が掲載されている資料としては、資料4、資料5などがある。
資料4 上野の花見を描いた図としては、図版11「上野清水堂不忍ノ池」がある。広重の『名所江戸百景』は、このほかにも様々な出版者から刊行されている。
資料5 p.38-39「長屋総出の花見」と題し、錦絵が紹介されている。ただし、白黒の小さい挿図なので、これらの出典からカラー図版を探すことになる。上野を描いたものとしては、「英泉 「江戸八景 上野の晩鐘」 神奈川県立歴史博物館」とキャプションがついた図がある。国立国会図書館の貴重書データベースhttp://rarebook.ndl.go.jp/pre/servlet/pre_com_menu.jsp
で「上野の晩鐘」を検索すると錦絵が1件ヒットし、カラー画像も見ることができる。(最終検索日:2006年7月12日)
その他、台東区部分のみではないが、隅田川での花見の様子を描いた絵図として、資料6、資料7などがある。
資料6
p.4〜5 「江都名所 隅田川花盛(歌川広重)」
p.15 「扇合隅田川八景 隅田堤乃桜(二代目歌川豊国)」
あり(共に原本は都立中央図書館特別文庫蔵)。
資料7 図番91〜98 歌川広重「東都名所 隅田堤雨中之桜」「東都名所 隅田川花盛」ほか、玉蘭斎貞秀「奥女中墨堤花見之図」、歌川広重「隅田堤花ざかり」などの錦絵が掲載されている。

<参考資料>
【資料1】 江戸の花見 / 小野佐和子‖著 / 築地書館 , 1992.4 T/0・380/3024
【資料2】 江戸名所花暦 / [岡山鳥‖著] . 新訂 / 筑摩書房 , 2001.4 ( ちくま学芸文庫 ) ST/0・200/5068
【資料3】 花と団子の東京散歩 : 東京名所花暦 / 小川和佑‖著 / 広済堂出版 , 2004.4 T/290.9/5119/2004
【資料4】 広重名所江戸百景 / 広重‖[画] / 岩波書店 , 1992.3 DT/0・720/3015
【資料5】 図説浮世絵に見る江戸の歳時記 / 藤原千恵子‖編 / 河出書房新社 , 1997.11 T/0・385/3030
【資料6】 今昔四季隅田川 : 江戸情緒とリバ-サイドに遊ぶ / 講談社‖編 / 講談社 , 1992.10 ( 講談社カルチャ-ブックス 63 ) T/10・20/3023
【資料7】 墨田の錦絵 : 錦絵でみる墨田 / [墨田区立緑図書館‖編] / 墨田区立緑図書館 , 1989.3 ( 墨田区立図書館叢書 6 ) T/24・72/1

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000031080

質問からは,江戸時代を対象としていること,現在の台東区あたりという地域を絞っていること,の2点に注意をしながら資料を探すことが求められていることがわかります。
そうすると,単に「花見」など主題に関係するキーワードだけでヒットした資料を絞り込んでいくだけでは,漏れがでる可能性が高くなります。花見について書かれた資料であれば,花見の絵図が掲載されている可能性は十分に予見できます。一方,江戸の絵図集にも花見の絵図が載っている可能性もあるわけですが,主題である「花見」にだけ気をとられていると,つい見落としてしまうことがあります。その点,この事例のように,花見関係の資料以外にも資料を提供しているのはポイントです。
同様に,絵図だから……と絵図だけに気をとられていると錦絵(浮世絵)の存在を見落としてしまうこともあります。もっとも,この絵図については,書架を実際にブラウジングすると,近いところに配架されていることが多いので,それほど神経質になることは無いかもしれません。
レファレンスで資料提供をする場合には,質問者がその資料を用いて調査研究するに必要十分な資料であることが求められます*1
また,絵図は原本そのものは所蔵機関にもよりますが,特別なコレクションの一部であることも多く,行けばすぐに見られるものではない場合も多くあります。ここで挙げた資料のように,一般的な本として入手可能な資料を探すことも,主題によっては必要です。この事例のように,インターネットで公開されている資料であればあわせて示すことも質問者にとって有益ですので,あわせて回答に入れておくもいいと思います。
その他,回答の書き方として,どのような絵図なのか,簡単な説明が回答にあるのもありがたいです。単に,該当ページのみを指摘するのではなく,概要を引用するというのは,レファレンスの回答として積極的に取り入れたい書き方だと思います。
この事例は,無駄のない回答ですよね。すばらしいと思います。
さて,毎日のように桜の開花や満開のニュースを聞く度に,日本の国土の広さを改めて認識しますよね。ちなみにnachumeの住んでいるところでは,今朝は雪がうっすら積もっていました……。さすがに,すぐに融けましたけど。

*1:もちろん,これには現物資料が無ければ,書誌事項だけでも伝え,相互貸借や予約など他の図書館サービスも案内することも含んでいます。