「大人」とはなにか。法律的・身体的・精神的など問わず。論文を執筆するために本がみたい。

4月から新しい環境に身を置いた人も(図書館に4月から勤めている人も),そろそろ慣れてくる頃ですよね。
あんまり文脈とは関係ありませんが,「大人」とはなにか,という至極哲学的な問いです。こういう質問ができる図書館ってある意味すごい場だと思いませんか?
回答と回答プロセスを引用します。

<回答>
『二十歳の事典』031.3ハを提供

<回答プロセス>
「大人」「成人」「二十歳」等のキーワードにて検索。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000043545

ここで紹介されているのは1冊の本です。『二十歳の事典』という本ですが,これは社会に出るにあたってのマナーやこころ構えなんかが書かれているものです。「二十歳の」と銘打っているものの,年齢にこだわらず読める資料だと思います。さすがにある程度歳をとればわかってくることもありますが,それでも,なかなか面白い本です。
事例を読む限り1冊の本を提供しているようですが,回答プロセスを見ると,いくつものキーワードを用いて,検索をしていることから,質問者とライブラリアンとの間で,さまざまなやりとりがあったことが予想できます。質問者の「論文を執筆」という部分については,レファレンスインタビューで得られたのではないかとnachumeは推測しています。
これだけでも十分良い事例ですが,もう少し詳しい状況が見えるとすごく良くなると思います。このような「大きな質問」に対して,どのような資料を提示(現物を提供できるかはとりあえず脇に置いておきます)できたかというのは,そこに至までに,相当インタビューを行い何度も資料検索をしているはずですから,レファレンスのノウハウが凝縮されていると言ってよいと思います。
一般的な事典を提供してある程度,法律的な面からも,精神的な面からも「大人ってこういうことですよ」ということがわかりやすくまとまっている資料という点ですごくいいチョイスだと思います。
これがもう少し法律的な面から,きちんと押さえたいというのであれば,少し古い感はありますが『二十歳の法律学』(第4版 有斐閣,2001)などがいいかもしれません。また,もう少し精神的な面から,というのであれば,これも若干古いと言われるかもしれませんが,様々な人の二十歳の頃についてインタビューを行いまとめた『二十歳のころ』(1998,新潮社)などがいいかもしれません*1。もう少し学術的な面から押さえるなら,雑誌記事索引発達心理学や教育学,法学など様々な分野にあたってみると何か見つかるかもしれません。あるいは,もう少しアプローチを変えて,世論調査やアンケート調査などの報告書は無いか,など探してみるのも悪くないと思います。これらは,実際にインタビューを行えば必要か不要かの判断ができるはず。あとは,実際に現物が所蔵されていれば,提供するし,無ければ所蔵機関を調査します。相互貸借でも複写の取り寄せでも,その人にあった資料提供を考えていけばいいわけです。
余談ですが,この質問のようにいわゆる「大きな質問」を入力すると,適当な資料のリストを返してくれるOPACがあると面白いですよね。でも,こういうのって蔵書構成をよく知っているライブラリアンが果たすべき役割でもあるのですよね。このような大きな質問をどれくらい,具体的な質問に変換し,資料提供に至か,というのはライブラリアンのセンスだと思います。カウンターでもレファレンスデスクでもいいのですが,このレファレンスにどんな資料を提供しようかと考えると結構難しいですよ。みんなでやってみたら,一人として全く同じ資料提供にはならないような気がします。研修や勉強会で取り上げたい事例だと思います。

*1:ただ,これは調査して発信するという手法の勉強という面が多分にあります。