合成皮革速報の1990年から1998年まで発行分を見たい。発行者は「合成皮革調査会」

欲しい資料の書誌事項(編著者や出版者がなどその資料を特定するための情報)が特定されているのになかなか資料にたどり着けないことってよくあります。「あるはずなんだけど……?」と悩む時間は誰にとってももどかしいものです。
今回紹介する事例は,そんな「あるはずなんだけど……?」な資料と利用者と結びつけています。回答と回答プロセスを引用します。

<回答>
合成皮革調査会によると、「合成皮革速報」は、図書館には頒布していないとのこと。したがって、図書館を通しての複写依頼などは不可能。合成皮革調査会でも、「速報」そのものは、倉庫に埋もれているのですぐに出せないが、調査内容によっては把握しているデータなどで回答できる場合もあるため、直接電話してもらえば答えます。とのことだった。

<回答プロセス>
1 自館OPACで検索→所蔵なし。
2 ふくい産業支援センターの所蔵資料を検索→所蔵なし。
3 NDL-OPAC、webcatともにヒットせず。
4 Googleyahoo!で、合成皮革調査会を検索→ホームページは開設していないとわかる。
5 合成皮革調査会は、大阪にあることがGoogle検索からわかったので、大阪府中之島図書館のホームページを見る。該当するデータなし。
6 タウンページで、「合成皮革調査会」を検索。直接電話する。
・合成皮革速報は、企業向けに頒布しているもので、図書館には納めていない。
・毎年新年号に、1年間の概説を載せているので、各号を見なくても、新年号を見れば分かるデータも多い。(本当に細かいことは各号を見ないとわからないらしい)
・古いバックナンバーも在庫はある。ただし、倉庫に埋もれているためすぐには出せない。
・利用者の調査テーマによっては、すぐにわかるデータを持っている可能性もあるので、直接問い合わせてもらっても構わない。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000027998

「あるはずなんだけど……?」の原因は図書館に頒布していないというのに起因しています。回答文には直接電話で問い合わせれば情報が入手できる旨案内しています。
この回答に至ったプロセスを読むと,調査過程で必要な事項をきちんと押さえていることがよく分かります。
まず最初に,質問から所蔵調査をすればよい,ということがわかります。自館の目録やNDL-OPAC,NACSIS-CATを検索するのは所蔵調査の基本事項です。これはライブラリアンはあまり意識せずに,段階的に行っている作業ではないかと思います。
すばらしいなぁと思うのは,「ふくい産業支援センター」という県の産業振興に関する団体で資料室があります。名前は様々ですが,どの都道府県にも似たような産業振興関係団体は存在し,業界誌や各種統計データなどを所蔵している場合がありますので,自館の資料で対応できない場合,特にこのような特定業界に関するデータや情報は専門機関の方が強いことから,そういう機関や団体を紹介するのも良いでしょう*1
また,大阪府立図書館のOPACを引いていますが,これは合成皮革調査会の所在地をきっかけにその地域の図書館を探しているものと思います(また,大阪府中之島図書館はビジネス支援図書館としても有名なので,業界誌などが所蔵されているのではないか,という期待もあったのだと思います)。
このように,所蔵調査を丹念にしていることがわかります。これくらい手順を踏むと,資料そのものの存在が怪しくなってくるのですが,それを解決するために採った手段が「直接聞く」です。これは案外有効なんです。そして,レファレンスブックの最たるものでしょうか,合成皮革調査会の電話番号はタウンページで調べています。見落としがちですが,タウンワークはいろんな情報が載っています*2
電話の結果,直接電話で問い合わせれば情報が得られることが分かりました。これだけでも,質問者にとっては有益な事だと思います。
ちなみに,この「合成皮革調査会」は,現在Webサイトを公開しており,「合成皮革調査会速報」も少しだけですがネットで見ることができます。

レファレンスサービスは資料と利用者を結びつけるのですが,これは言い換えれば,情報と利用者を結びつけるものとも言えます。
図書館は資料そのものを所蔵していなくても,情報を得るためのヒントになることがあります。図書館が公開しているOPACを引いて,「資料が無い」とあきらめる前に,レファレンスサービスを利用してみてください!

*1:このようなサービスをレフェラルサービスといいます。図書館はこのような専門機関への橋渡しを担うこともあります。

*2:全国各地の電話帳は少なくとも都道府県立図書館にあるはずので,近所の図書館に電話帳が無くても,所蔵館に照会してみてください。