ネコが登場する井上ひさしの作品を探している。全て文末が「〜のだ」で終わっていた。「サンマだけがマンマじゃないのだ」という文があったと思う。

質問を聞いただけでは,簡単に回答可能なものか時間がかかりそうなのか,一瞬判断がつきません。質問に関わる情報があまり多くなく,手がかりは記憶に残っているもの……というところから適切な資料を提供できるか,というのはレファレンスライブラリアンの腕の見せ所かもしれません。
とはいえ,あくまでもレファレンスですから,きちっと段階を追っていくと資料に辿り着くことができる可能性が高くなります。レファレンスは必要なレファレンスブックを必要に応じて利用するもので,トリッキーな職人芸ではありません。
回答を引用します。

お探しの作品は『新・文学の本だな 小学校高学年6:長靴をはいた猫からの手紙』に収録されている「なのだソング」です。
文末が「〜のだ」で終わっており、「サンマばかりがマンマじゃないのだ」という文も見つかりました。
『作家名から引ける日本児童文学全集案内』井上ひさしの項目からたどりつきました。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000049177

最後の一文が肝要です。この事例では,ここが一番のポイントです。
回答プロセスが書かれていないので,推測するしか無いのですが,この『作家名から引ける日本児童文学全集案内』を調査する以前に多くの資料を参照したのではないかと思います。いきなり児童文学関係を調査することはあまり無いような気もします。児童サービスの担当で,質問段階から児童文学関係ということが分かっていたのかもしれません。
当然ながら,質問に対するアプローチとしては,「井上ひさし」というキーワードが中心になるでしょう。今回は井上ひさし作品で間違いなかったのですが,結果的に異なる作者だとしても,第一段階は質問文から得られる事項を中心に調査戦略を組み立てる必要があるはずです。
幸い井上ひさし作品は各種レファレンスブックに採録されていることも多く,作品を見つけやすいことは見つけやすいと言えるのですが,問題はその次です。「『〜のだ』で終わる作品」をどうやって捕捉するかという点です。こればっかりは原資料にあたってみなくてはなりません。ただ,作品名が「なのだソング」ということで,そこから「あっ,これかも?」と思うことは十分にあるでしょう。事実,作品を参照すると,「なのだソング」で間違いなく文末が「〜なのだ」という詩になっていることが分かりました。
作品と作家を調査するときは,各種辞典の索引をきちんと理解して使う必要があります。このレファレンスブックのように「作家名から引ける」とあれば別ですが,「文学全集総覧」というような資料ですと,その資料は何をどのようにすれば適切な情報を得られるのか,という点が非常に重要になってきます。
ここまでくれば,あとは収録資料を探せば資料へ辿り着くことができると思います。
少ない情報源をうまく生かすには,きちんとレファレンスブックを使いこなす必要があるということがよく分かります(とはいえ,この質問はインターネットでキーワード検索をしてもなんとなく手がかりがつかめますが)。
すこし補足すると,「なのだソング」は『11ぴきのねこ』の合唱版に収録されています。もともとの原作は馬場のぼる11ぴきのねこ』ですが,これを井上ひさしが戯曲とし,さらに青島広志オペレッタ(合唱劇)にしたものです。
ちなみに。
nachumeは高校生のころに,オペレッタでこの『11ぴきのねこ』をやったことがあるので,この質問の回答知ってました。オペレッタとして,あちこちで上演されているので,質問の回答を知ってる人も多いかもしれません。「なのだなのだなのだー♪」ってアレね,って感じで。こういう時って,ウラをとりながら進める必要があるので,資料の提供という段に至るまでが逆に大変だったりします。