他県の冠婚葬祭についての資料を見たい。特に、「香川の冠婚葬祭(四国新聞社・2006.11)」のような本で、結婚について県別の特徴を調べている。

冠婚葬祭に限りませんが,風俗習慣というのは地域によって独特のものがあり,そういう話題はなかなかに盛り上がるものですよね。

(1)当館での所蔵は香川県関係の次の2点のみ。

・おつきあいとマナー 冠婚葬祭かがわの相場としきたり 高松リビング新聞社 2004.2
・香川の冠婚葬祭 四国新聞社 2006.11

(2)県内の図書館には次のような所蔵がある。

・岡山の冠婚葬祭(山陽新聞社)
・北陸の冠婚葬祭(北国新聞社)
都道府県別冠婚葬祭大事典(主婦と生活社)

(3)徳島県立図書館での所蔵についてきかれたので、
次のような所蔵があるらしいことを回答。

・土佐の冠婚葬祭(高知新聞社)
・徳島の冠婚葬祭(徳島新聞社)
・沖縄の冠婚葬祭便利帳(那覇出版社)
・北海道の冠婚葬祭(北海道新聞社)

(4)関連情報(参考)

県別の冠婚葬祭に関する図書一覧(※各県立図書館のWebOPACを検索して調査。新聞社発行のものが多い)

県名 書名等

北海道 北海道の冠婚葬祭と暮らしのおつきあい / 佐藤朝子. -- 北海道新聞社, 1999.11
青森 あおもり冠婚葬祭事典 東奥日報社 ; 1996.10
岩手 岩手の冠婚葬祭 岩手日報社出版部‖企画 編集 岩手日報社 1994.9
宮城 宮城の冠婚葬祭Q&A プレスアート‖編 プレスアート 2007
秋田 秋田の冠婚葬祭ハンドブック Part2 アートシステム/編 秋田放送 1988.5
山形 山形の冠婚葬祭 各地のしきたり 山形新聞社/編 山形新聞社 199412
福島 ふくしまの冠婚葬祭 歴春ふくしま文庫 田母野 公彦/著 歴史春秋出版 2003.6
茨城 茨城のお付き合い百科 / 茨城新聞社出版局. -- 茨城新聞社, 2002.2
栃木 新栃木の冠婚葬祭 / 下野新聞社. -- 下野新聞社, 1998.11
群馬 ぐんまの葬祭 旅立ちかた旅立たせかた 葬祭ガイドブック 上毛新聞社出版局/編 上毛新聞社 2000.1
埼玉 (不明)
千葉 わが家の安心箱・冠婚葬祭の基礎知識 武内純子 著 ユニ・ポスト 2003.7 ※出版地:千葉
東京 (不明)
神奈川 (不明)
新潟 新潟の冠婚葬祭 新潟日報事業社出版印刷部 385 1995
富山 新とやまの冠婚葬祭 / 北日本新聞社出版部. -- 北日本新聞社, 1999.8
石川 かが・のとの冠婚葬祭 / 北国新聞社出版局. -- 北国新聞社, 1994.8
福井 ほくりくの冠婚葬祭 北國新聞社/編 北国新聞社 2005.8
近ごろの福井県の冠婚葬祭 エクシート/編 エクシート 2003.12
山梨 (不明)
長野 信州の冠婚葬祭. -- 3訂版. -- 信濃毎日新聞社, 1997.4
岐阜 (不明)
静岡 新・静岡県の冠婚葬祭 / 静岡新聞社. -- 静岡新聞社, 1999.12
愛知 名古屋版おつきあい講座〜冠婚葬祭マナー 竹内 くに子/著 中日新聞本社 1995.6
三重 三重の冠婚葬祭マニュアル すぐに使える! 月刊くじら別冊 くじら編集室 2005.11
滋賀 (不明)
京都 京都・宇治・城陽地方の儀式作法入門 冠婚葬祭その心としき 岩上 力/著 光琳社出版 1986.3
大阪 大阪神戸の冠婚葬祭 しきたり・相場・おつきあい サンケイリビング新聞社 2002.3 385
兵庫 兵庫の冠婚葬祭 / 神戸新聞総合出版センター. -- 神戸新聞総合出版センター, 1992.7
奈良 (不明)
和歌山 (不明)
鳥取 とっとりの冠婚葬祭 こんな時どうする?冠婚葬祭Q&A 鳥取シー・エム・シー 2006.11
島根 島根の冠婚葬祭〜家蔵版 白石昭臣/共著 ワン・ライン 2000.4
岡山 岡山の冠婚葬祭 / 山陽新聞社. -- 新版. -- 山陽新聞社, 1996.11
広島 新・ひろしまの冠婚葬祭. -- 中国新聞社, 1996.7
山口 (不明)
徳島 徳島の冠婚葬祭. -- 徳島新聞社, 1995.5
香川 おつきあいとマナー 冠婚葬祭かがわの相場としきたり 高松リビング新聞社 2004.2
香川の冠婚葬祭 四国新聞社 2006.11
愛媛 冠婚葬祭松山の相場としきたり. -- えひめリビング新聞社, 1994.5
高知 高知の冠婚葬祭読本 / 和田書房,月刊「土佐」編集室. -- 第2版. -- 高知新聞社, 2001.1
福岡 福岡県の冠婚葬祭. -- 西日本新聞社, 1993.3
佐賀 佐賀の冠婚葬祭マナー百科. -- 佐賀新聞社, 2002.2
長崎 (不明)
熊本 熊本の冠婚葬祭. -- 新版. -- 熊本日日新聞社, 2001.10
大分 新・大分の冠婚葬祭. -- 大分合同新聞社, 1997.11
宮崎 宮崎の冠婚葬祭. -- 宮崎日日新聞社, 1993.10
鹿児島 鹿児島の冠婚葬祭お付き合い百科. -- 南日本新聞社, 2001.6
沖縄 沖縄の冠婚葬祭 / 那覇出版社. -- 那覇出版社, 1989.7

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000045851

この事例の何が良いかというと,もう明らかですが,参考情報として,全国の都道府県立図書館のOPACを片っ端から検索して見つけた資料を列記している点ですよね。中には「不明」というのもありますが,多分よく探せば何かしら見つかると思います。一冊の本になってなくても,地域情報誌で特集が組まれていることもしばしばありますし。こうやってみていくと新聞社や情報誌の編集をしている出版社が手がけているようですね。
一番目につくのが,前述した(4)の参考情報部分ですが,レファレンスとして見たときももちろんすばらしいです。自館の所蔵資料,そして,県内の所蔵資料,さらに,隣県の所蔵資料と,地域的な順を追って項立てした回答がなされています。自館で提供できる資料と相互貸借等によって提供できる資料など,サービスにあわせて展開される回答は見習いたいものです。
せっかくなので,不明とされている県を補完してみたいものですよね。レファレンス協同データベースにもテンプレートみたいなものを用意して,みんなで事例を作っていけるようなデータがあったら面白いと思います。Wikipediaのテンプレートみたいにいろんなくくりで用意しておいて,かけるところを書いていく,という形。調べ方マニュアルの方が適当かもしれませんね。そしたら,今回のような都道府県別冠婚葬祭関連資料とか,あるいは,都道府県別地域情報誌タイトルリストとか,他にも沢山できそうです。現状でやるとすれば,参加館がコメントしあうのが現実的かと思います。
閑話休題。冠婚葬祭というとどうしても気になるのがご祝儀の相場だったり,服装だったりしますがそういうことはいざとなると,悩んでしまいます。そういうときは図書館へ。一般的な冠婚葬祭に関する資料や,この事例のように地域を主題にした資料もあります。
それぞれの地域にある図書館には,その地域の情報が蓄積されています。せっかくなので,どんどん活用したいですね。
というわけで,nachumeもこの事例を活用させてもらいました。今週末は,親類の結婚式に参加です。なんて時期に式や披露宴をやるんだと,正直少し呆れつつも,押さえておくべき習慣などはあるのかしら,と資料をめくって一通り読んでみました。服装もいろいろありますよねぇ。このようなフォーマルなドレスコードの席に座ることも頻繁には無いですから,一面楽しみでもあります。普段から黒のストレートチップを履くことが多いのですが,せっかくなので,週末のために,磨き込んでおります。目指せ鏡面。トゥ部分とヒール部分がいつにも増して,鈍く輝いています。まぁ,自己満足の世界ではありますけれども,nachumeは靴磨きが大好きです。話が飛びましたが,この事例は個人的にツボな事例でした。こういう事例に出会えることはとても嬉しいですし,レファレンス協同データベースって面白いなぁと思います。

ペースは落ちてますが,続けます。断固続けますっ。

あけましておめでとうございます……というのは少し,いや,大分遅いのですが,何はともあれ,今年もよろしくお願いします。ペースは落ちてますが,続けます。断固続けますっ。
今年の目標は体力的に無理をしないにしようかと思います*1。ようやく最近になって体調が戻ってきたなぁと実感しつつあります。が,ここ数日は寒いのなんの。ここは踏ん張り時です。……なにか大きな間違いを犯しているような気がしてなりません。
えーと。日記的なつぶやきはこれくらいにして。
今年も2月にレファレンス協同データベース事業参加館のフォーラムが行われます。今年のテーマは「レファレンス協同データベースの戦略的活用−変わりゆく図書館経営の中で−」ということだそうで,事例の「活用」を全面的に取り上げることになるようです。
詳しくはレファレンス協同データベースのサイトを参照してください。

当日が楽しみですねぇ。参加申し込みの締め切りは今月末です。
ぜひ興味のある方は参加してみてください。nachumeも参加予定です!

*1:まぁ,でも多分無理。多少無理してでも無理がきくうちは今だけ,とかなんとか言い訳して,詰め込むんですよ。性格的なものですからねぇ……。それに,自分の作業量なんてたいした量じゃないですし。忙しいなんて口が裂けても言えません。あ,でも少しは本気で直そうかなとも思い始めています。先日はいつもお世話になっている洋服屋の店長さんにも小一時間説教されましたし。

群馬県藤岡市中央公園に関孝和の石碑「算聖之碑」があり、碑文に武田氏との関わりが書いてあるそうだ。碑文全文が知りたい。

前回に次いで,和算に関する事例をもう一つ。今回はお約束というべきでしょうか,関孝和に関する事例です。関孝和は算聖と呼ばれています。群馬県藤岡は関の生誕地とされており,そこに算聖之碑という顕彰碑(というのかしらん)があります。
回答を引用します。

関孝和の父は内山七兵衛であるが、碑文には関五郎左衛門に養われ同家を嗣いだこと、内山、関家の両家は武田家の遺臣であり、藤岡の領主芦田家に仕え、芦田氏没落の後、徳川家に使えたことが記されている。なお、碑文全文について は照会資料『関孝和』(平山諦著 恒星社厚生閣 1959)をご覧ください。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000039273

この質問の場合は,「関孝和」という人物調査をしていく方法と,「藤岡の碑文」という地域調査をしていく方法と大きく二つが浮かびます。
回答文と参考資料(引用はしていません)を見るとどちらかというと「関孝和」に関する人物調査ということで進めていったように見受けられます。地域調査となると市町村史(誌)を中心にまず参照したいところですが,他地域の資料が必ずしも蔵書に存在するとは限りません。人物調査をきっかけに,調査が展開していくことを期待するのは間違いでは無いと思います。
関孝和に関する資料は,NDC分類の「419」あたりをブラウジングするだけでも数冊見つかるかもしれませんし,キーワードに「関孝和」を指定してOPACで直接調べていっても何冊か資料に行き着くと思います*1。あとは手にした資料に碑文があるかどうかを見ていくと,「算聖之碑」を見つけることができます。この事例では平山諦の著書を紹介しています。
事例に戻ると,シンプルな回答で,良いですよね。碑文の趣旨と全文を資料の提供とともに行うという基本をしっかり実践しています。
さらに,キーワード(引用していません)に,カタカナでヨミを振っているのもユニークだと思います。同じフィールドに入れてもいいんじゃないかなとも思いますが,それでも,漢字とヨミと両方が検索対象となるのはすばらしいと思います。アクセスのバリエーションが広がりますね。
すこし余談ですが,この事例で紹介されている資料の著者である平山氏は東北大学和算史を研究していた研究者です。彼の和算関係の蔵書は現在東北大学のコレクションになっています。和算資料を検索していくと,必ずと言っていいほど,平山氏の著書が検索されてくるので,覚えておいて損は無いですよ。近年筑摩学芸文庫などで過去の著作が復刻されているので,それなりに入手しやすくなっています。


さらに余談ですが,皆さん数学とか日常親しんでいますか? nachumeの机には「チャート式数学I+A」とか「大学新入生のための数学」とかそういう本が2,3冊並んでいます。今さら大学受験なんぞするわけではなく,昼休みに問題を一つ二つ解くというだけなんですが……。いや,なんていうかですね。数年前より明らかに計算力が落ちている気がするんです。なんていうか暗算がすごく遅くなっているような自覚があります。ある日ふと計算のあまりの遅さに「これはヤバイ…」と思い始めて,数学の問題を解きはじめました。因数分解とか。二次方程式を解くとか。関数とか,数列とか。まぁ,有り体に言えば脳トレです。だからなんだという話です。メリークリスマス!(唐突に)

*1:そして,大概の本には関孝和は名前の割に(といったら失礼かもしれませんが),その実際のところがあまりはっきり伝わっていない旨の記述があります。

『塵劫記』を探している。

今年2008年は有名な和算家である関孝和の没後300年です。各地で和算に関する企画展やイベントが行われたようで,nachumeもいくつか和算書の展示に携わりました。
ということで,和算に関するレファレンス事例をいくつか取り上げてみたいと思います。年を越すとせっかくの微妙な和算ブームである関の没後300年から外れてしまいますし……。
さて,いきなりですが,和算書といえば「塵劫記」です!
と言い切ってしまってもよいと思いますが,この「塵劫記」は江戸時代を通じて数学書のベストセラーだったと言われています。そんな「塵劫記」にどのようにアクセスしたらいいか,この事例と一緒に見ていきたいと思います。

下記文献の所蔵があった。

塵劫記』初版本 : 影印、現代文字、そして現代語訳 / 吉田光由著 ; 佐藤健一訳・校注 研成社 , 2006 寛永4年版 ISBN:4876394091 
塵劫記 / 吉田光由著 ; 大矢真一校注 岩波書店 , 1977 (岩波文庫 青-24-1) ISBN:4003302419 
塵劫記 / 吉田光由著 大阪教育図書 , 1977 3冊 寛永8年大型三巻本の複製 別冊:塵劫記 現代活字版, 塵劫記論文集 和装 

和算資料全文画像データベース(東北大学)で画像が公開されていた。 
塵劫記・改算記類 
http://www2.library.tohoku.ac.jp/wasan/wsn-list.php?cls=j (2008/07/18確認)

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000045890

質問を受けたライブラリアンが,「塵劫記」がどんな資料なのかについて全く知識がない場合,つまり江戸時代の数学書だということが分からないと少し遠回りをすることになるかもしれません。和算に関する本であるということが分かっていれば,それだけ早く資料提供に至ると思います。
多少くどいのですが,少し考え方の手順を整理してみます。
OPACに「塵劫記」というキーワードを入れれば遅かれ早かれ「塵劫記」は江戸時代の数学書だということが分かると思います。この事例にも挙げられている『「塵劫記」初版本』(2006,研成社)や,『江戸のミリオンセラー『塵劫記』の魅力』(2000,研成社)などが見つかるのではないかと推測されます。これらのタイトルからなんとなく,昔の本なのかな? という思考がとれるといいと思います。蔵書規模がそれほど多くなくとも,例えばNDL-OPACでタイトルに「塵劫記」を含む資料を検索した結果一覧を眺めているだけで,なんとなく国書,古書の類なのかなーという推測は十分に可能でしょう。というよりレファレンス・ライブラリアンとしては,このあたりの作業で推測可能になってほしい所です*1
原資料であれば所蔵機関を,そうでなければ影印資料や翻刻資料を探しているのか,それとも解題資料を探しているのか,など質問者の要求になるべく添えるような本を探していくことになります。
この事例では,原資料というよりは翻刻資料を提供しているようですので,おそらくそういう要望が質問者にあったのだと推測できます。
原資料の所蔵機関であれば,定番の参考資料である『国書総目録』や「日本古典籍総合目録」*2などを用いるのが一般的です。また,和算書というテーマであることから,比較的大きなコレクションとして有名な東北大学附属図書館,日本学士院をあたってみるというのも一つの手です。どの分野のコレクションがどの機関にあるかというのを一つでも二つでも覚えておくと,意外な時に役に立ちます。そして,原資料は通常の図書より厳しい閲覧制限がある場合も多いため,かならず確認が必要です。
原資料でなく,翻刻資料などをさがすのは目録を検索し,現物資料をあたるという通常の探し方と同じです。また,この事例のように,日本史に関する事典を参照し,必要な資料へ辿り着くのもうまいやり方ですね。
この事例では冊子体以外にも,インターネット上で公開されているデジタルアーカイヴも一緒に紹介しています。これもいいですね。ただし「塵劫記」は異版本やパロディ本などが多く,質問者の意図と違う資料の可能性もあるので,よく吟味検討することが必要です。このあたりの吟味は最終的には質問者(=資料を利用する人)がおこなうもので,レファレンス・ライブラリアンはその手伝いをすることを忘れずに。ちなみに「塵劫記」は吉田光由による初版本と改訂版がありますが,完全な形(著者の吉田光由が刊行した初版本,改訂版,それぞれ全3巻揃っている)ではあまり現存していないようです。
もう一つ,この事例の良いところがあります。この記事には引用していませんが,参考資料にISBNを付記している所です。これはいいですね。すばらしいです。一般に流通している本には概ねISBNコードが付与されていますので,参考資料として掲載する際,ISBNを併記するとその事例から資料へのアクセスがより容易になります。事例をさらに利用する際の便が良くなります。このことは今年2月に行われたレファレンス協同データベース事業参加館フォーラムで岡本氏の講演内で指摘されていた事でした*3。これをきっかけにしたのかどうかは不明ですが,このような事例の作り方の方がよりよいものだなと思いました。これは是非取り入れたいです。
個人的に,今年は和算付いていたのでちょくちょくのぞいていたので,和算に関するレファレンス事例を見つける度に気になって見ていました。これからも偶に紹介していこうと思っています。

*1:もっとも質問者と話をしているうちに分かるので上述の手順を踏むことは少ないと思います。しかしながら,かならずしも対面で質問を受けるとは限りません。メールでレファレンスを受けていると,おどろくほど簡単に「○○を入手したい」という一文だけ送信されてくる場合も少なくありません。もちろんこのような質問には回答の前にインタビューを試みます。

*2:日本古典籍総合目録 http://base1.nijl.ac.jp/~tkoten/about.html

*3:岡本真「レファレンス協同データベースに期待すること−Web標準、API公開、レファレンス再定義」『第4回レファレンス協同データベース事業参加館フォーラム記録集』)PDFファイルへのリンクです。

日記です。 いつの間にか,10月半ばから11月を経て,12月中旬になったよ。

とある方から,更新もせず何をしていたんだと言われまして。近況を書いてみよう,と。レファレンスとは関係ないので,読まずにとばしてくだすって構いません。

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漱石と落語の関係について調べたい。

nachumeは夏目漱石の作品が好きです(唐突に)。
たまに読みかえすことがあります。大分前に買った文庫本が今はもうボロボロです(電車の中で読んだり,旅行先に持って行ったりと扱いが酷いからなんですが)。
夏目漱石はおよそ100年前に活躍していたわけですが,ちょうど100年前には「夢十夜」という作品を新聞連載していました。「夢十夜」の第一夜は百年待つ男の話です。100年という時間は長いのか短いのか,考え出すと壮大なテーマだなぁと秋の夜長に一人哲学談義にふけるのが楽しいです(本人はいたって真面目です……)。
閑話休題夏目漱石と落語の関係について知っている人はかなりいるのではないかと思います。上述の「夢十夜」と同年に連載された「三四郎」の中でも柳家小さんについて登場人物が言及している箇所があります。
レファレンスとして,こういう質問に回答するときは,たとえ上記のような知識があったとしても,それをそのまま記憶を典拠として資料提供するのは避けるべきです。もちろん,こういう知識は調査の過程で大いに役立つものですから,積極的に利用すべきと思いますが,あくまでも,レファレンスライブラリアンの行為は,再検証可能な科学的行為であって欲しいと思います。
ということは,漱石と落語の関係に関する資料をどのようにして探すか,という思考を展開させなくてはなりません。
回答と回答プロセス(事前調査事項となっていますが,多分回答プロセスのことだと思います)を引用します。

<回答>
下記の図書、論文などが見つかった。
漱石と落語 水川隆夫著 増補 平凡社, 2000 (平凡社ライブラリー ; 342) 

CiNii で下記がヒットした。 
1. [40015993041]水川,隆夫
漱石と落語--「二百十日」を中心に (特集 落語を愉しむ)
國文學 : 解釈と教材の研究 53(8) (通号 768),64〜71,2008/6(ISSN 04523016) (學燈社 〔編〕/學燈社)
(略)

国文学論文目録データベースで下記がヒットした。 
No1
項目 内容
論文題名 漱石の落語
論文執筆者 恩田雅和 おんだまさかず
掲載誌名 阪大近代文学研究 
通巻 5
ページ数 11  1 〜 11
発表年 2007 /03 /25
館内請求記号 ハ00158
(略)

<回答プロセス>
Webcat Plus(一致検索)で、キーワード 漱石 落語 で検索した。
CiNii で論文を検索した。
国文学論文目録データベースでも検索した。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000046375

全部は引用しませんでしたが,回答に検索結果を載せていますので,具体的な文献については,大元のレコードを参照してもらうとして,回答文から調査に大きく3つのデータベースを利用していることが分かります。一つは図書情報を探すWebcat Plus,二つめは論文情報を探すCiNii,三つめが,国文学に関する論文記事索引である国文学論文目録データベースです。
前二つのデータベースはよく利用されるし,当サイトでもなんどか言及したことがあります。今回は,国文学論文目録データベースについて簡単に紹介してみます。

このデータベースは日本文学研究論文を対象としたものです。収録対象は,大正元年からと広く,また翻刻や複製情報も得られるため,思わぬ発見をすることがあります。日本文学研究に関する調べ物の時は,一度引いてみる価値があると思います。
何かを調べるときに,調べる対象の分野が絞れているなら,専門分野の事典類を探すというのはレファレンスの進め方の定石です。効率よく文献情報を得るための手段として,覚えておくと良いですよ。今回は「国文学論文目録データベース」を取り上げたくて,このレファレンス事例を紹介しました。
漱石と落語について,調べるのであれば,回答にもありますが,『漱石と落語』を一読するのが早いかと思います。参考文献をこの本からたどっていくことも,調査を進める上で,大事なポイントになるはずです。


久々に,このサイトの更新をしますが,皆さんお元気でしたか?
季節の変わり目です。体調には十分お気をつけください。nachumeはこのところ風邪気味です。。。

ドクダミを材料とした発酵酒の作り方が書いてあるものはないか。

もう8月も下旬になってしまったので,ドクダミの花の時期は過ぎてしまったかと思います。じめっとした所に白い花が映えているので,なんだか見かけると不思議な気分になります(nachumeだけかもしれませんが……)。
ドクダミといえばドクダミ茶がまず思い浮かんだのですが,ここでは発酵酒の作り方についてのレファレンスです。回答と回答プロセスを引用していきます。

<回答>
下記資料に掲載されている。
『とっておき果実酒薬酒』大和富美子/著(596.7/ヤマト)p104〜105
『薬用療法ハンドブック』村上光太郎/著(499.8/ムラカ)p158
『すぐ作れる果実酒・薬酒百科』大海淳/著(596.7/オオウ)p34
『現代農業』2004年4月号の記事「春の野草健康術」のうちp299「ドクダミ

また、「薬酒」の一般的な作り方について下記資料に記述あり。
『図解四季の薬草利用』小林正夫/著(499.8/コハヤ)p22
『検索入門 薬草』御影雅行/ほか著(499.8/ミカケ)p190

<回答プロセス>
1.「ドクダミ」、「発酵(酒)」をキーワードに自館所蔵検索、総合目録ネットワーク,Webcat-plus等で検索するが、関係しそうなものはヒットせず。
2.「薬草」(NDC:499.8)の書架をあたる。
3.「薬酒」で検索すると、499.8の他に596.7の本も数冊ヒットした。
4.googleで「ドクダミ酒」を検索すると雑誌「現代農業」の記事がヒット(農文協のHPより)。
5.国会図書館雑誌記事索引で「ドクダミ」で検索すると専門的なもの1件のみであった。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000030921

当たり前ですが,ドクダミの発酵酒について書かれた資料を提供するのが,このレファレンスの回答です。
これ以上ないシンプルな回答ですが,一ひねりしているところがすばらしいです。いわずもがな,薬酒の一般的な作り方についての資料を合わせて提供している点です。この回答文中にはあえて質問にあった「発酵酒」という単語を「薬酒」に置き換えています。これはレファレンスそのもの(対質問者とのやりとり)という点からいうと,より適切な資料を探すためのキーワードを資料と合わせて提示しているという点,レファレンス事例という点から考えると,「発酵酒」については「薬酒」を参照すると資料に辿り着く可能性が高いことをあらわしているという二つの機能をはたしています。
「発酵酒」と「薬酒」の関係は,回答プロセスを見ていくと分かります。このプロセスも調べ物の参考にしたい手順ですね。
通常,レファレンスに回答しようとするならば,質問者へのインタビューを行い,主題に適切なキーワードを選択し,目録や事典類にあたります。求める資料に辿り着かない場合は,キーワードを切り替え,再び目録や事典類にあたるという手順を繰り返します。キーワードは質問事項を元に選ばれることが多いため,このレファレンス事例のように「ドクダミ」や「発酵酒」というキーワードを選択するのは,第一段階の調査手順としては間違っていません。ところが,回答プロセスにあるように,これらのキーワードではうまく資料へ辿り着けていません。
このような場合,キーワードを選択し直すという手段が一般的です。キーワードの再選択にはいくつかの考え方がありますが,この場合は,キーワードの持つ概念をより拡げてみるということでしょう。「ドクダミ」は植物であり漢方によく利用されていることから「薬草」という拡げた概念へ,「ドクダミ」や「発酵酒」をより拡げた概念としての「薬酒」というキーワードを導くことができます。
これらをもとに目録を引くと,「薬酒」が主題として概ね分類されている499.8(生薬学. 和漢薬)以外にも,596.7(飲料: 酒)に分類されている資料が見つかりました。ここまでくると,あとは,実際にそれぞれの書架をブラウジングしたり,実際の資料から参考文献を参照したり,あるいは似たようなタイトルを持つ資料,件名を同じくする資料などと調査の幅は広がっていきます。
図書のみならず,雑誌記事索引を使って資料を検索している点も見逃せません。このサイトでも過去に何度か言及していますが,雑誌の記事は情報の宝庫ですから,記事索引を存分に活用することがレファレンスでは求められていると思います。
この事例では,回答プロセスがきちんと書かれており,かつキーワードの選択については非常に参考になるものと思います。
ところで,ドクダミ酒ってどんな味がするんでしょう……。あんまり美味しそうなイメージはないですのですが,身体には良さそうです。

あ,そうそう。みなさん,身体に良さそうといえば,風邪には注意してくださいね。nachumeは少し前まで夏風邪で高熱が出て休んでしまいました。健康って損ねてから気付くんですよね。反省です。