10月29日はFuture Librarian 全国図書館大会U40プレミアセッション!

しばらく更新していませんでしたが,アバウトに書いているとおり本業が忙しすぎて手が回らないというのが本当のところです。
そして,本業が忙しいといいながら,明日は全国各地で,全国図書館大会の関連イベント「Future Librarian 全国図書館大会U40プレミアセッション」に参加します。というかnachumeは事務局を担当しています。仙台会場にて皆さまをお迎えします。
東京会場をはじめこのイベントに参加なさる皆さまの明るい未来を願って。
http://futurelibrarian.g.hatena.ne.jp/

最近5年間の国内の高校卒業後の進路状況のうち,就職者数と就職率を調べる方法はありますか。

ちょっと間があいてしまいましたが,前回,前々回と同様に,基本的なレファレンスブックを用いて,どんなレファレンス質問に回答できるかを見ていきたいと思います。
今回の資料は『日本統計年鑑』です。
そのタイトルの示す通り,日本に関する統計資料の年鑑です。特定の統計というよりは広範囲の統計を収録しています。漠然と「○○に関する統計がないかな…?」と調べていくのに適しています。
このレファレンス質問では,高校卒業後の進路状況を調べています。
回答を引用します。

『日本統計年鑑』 第50回 平成13年の「事項索引」を引くと,「高等学校-卒業後の状況」などから,平成7,9〜11年次の各数値がわかります。出典の『学校基本調査報告書初等中等教育機関専修学校各種学校編』平成12年度にあたると,平成11,12年の各数値のほか,就職率については,巻末の「参考資料・年次統計」に昭和25〜平成12年の数値が収録されています。また文部省関係の主な統計を集めた『文部統計要覧』平成13年版にも,平成8〜12年,5年間の就職者数と就職率が収録されています。
『日本統計年鑑』(年刊)は,国内の主要な統計表を網羅しており,巻末の「事項索引」(関係用語の50音順)から,さまざまな収録統計表を検索することができます。
統計を調べるには,『統計調査総覧』『統計情報インデックス』 『データ&DATA』などのガイドブックが多数あります。また,インターネットの,総務省統計局統計センターの 「統計情報インデックス検索システム」 なども参考にされてはいかがでしょうか。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000001862

回答に至る大きな流れとしては,『日本統計年鑑』の索引を用いて該当する統計表にあたり,出典の統計を参照し必要に応じて提供する資料のバリエーションを広げていく,というものです。『日本統計年鑑』はいろいろな統計を収載している資料ですので,より詳細な統計表を入手する場合は,出典元の統計にあたるというのは定石といえます。この時点で,ある程度の数値を入手できました。
さらに,もう一段階すすんで,高校生の卒業後の進路状況ということで,この分野の施策を行う文部科学省厚生労働省に関係する資料を提供しています。このあたりは,自然な発想ですので,問題なく資料にたどりつくかと思います。
統計資料は各館の蔵書規模に応じてどれくらい所蔵しているかまちまちなものです。この『日本統計年鑑』のような広範囲の主題を取り扱っている資料が1冊でもあると,調査の取り掛かりにとても有用です。
このプロセスに載っている参考資料はいずれ取り上げて記事にしたいと思っていますが,インターネットで利用できる総務省統計局の「統計情報インデックス検索システム」ですが,現在は

として公開されています。
この事例を試してみると,左上「統計データを探す」の「キーワードで探す」のキーワードとして「就職率」をセットして検索すると,「学校基本調査」と「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」がヒットしました。学校基本調査をたどっていくと,エクセルファイルで,「2008年年次報告-就職率(昭和25年〜)」が得られました。かなり便利です。
この事例の最後の段に書かれていますが,統計を調べるためのガイドブックは多数あります。すべてを使いこなすのはなかなか難しいにしても,レファレンスライブラリアンとしては,一つずつ使い方を覚える必要があるといえます。また,その地域の行政統計の在り処についても,しっかり確認しておきたいものです。地域の情報は地域の図書館がそのアクセスを担っているともいえます。首長部局が用意している行政情報センターのような部署に,どんな資料があるか,さらに,どのような施策をどのような部署で行い,成果物がどのような形で公表されているか,など常にアンテナを張っておくことが必要です。一見地味な作業なのですが,とても重要ですよね。
統計調査は実際のレファレンスで頻度の高いものだという実感があります。自館の所蔵資料でどんなことを調べられるのか,時間を見つけて予めチェックしておくとよりよいレファレンスサービスにつながると思います。

オーストラリアのメルボルンの気候(気温や相対湿度など)を知りたい。

『理科年表』という本があります。自然科学系のデータを広範囲にわたって収録しているデータ集です。戦前から発行され,今も刊行が続いているものです。詳しくは,「理科年表オフィシャルサイト/理科年表とは」を読んでください。レファレンスの中に位置づけるとしたら,自然科学系のレファレンスにおいてまず参照すべき資料の一つと言えるでしょう。
今回とりあげる事例でも,『理科年表』を用いて回答しています。日本であるか否かにかかわらず特定地域,特定都市についての気候について調査したいときもやはり,『理科年表』が有効です。定番のレファレンスブックをどういう風に使っているか,という点に注目しながら,回答を見ていきます。

・『理科年表 机上版  2009年 (82冊) 』(丸善株式会社 2009)
こちらの資料には、世界の気象についてのデータが掲載されており、メルボルン(Melbourne)についても、気温、降水量の月別平均値を知ることができます。
 
相対湿度については『理科年表』には掲載されていませんので、次のデータベースをご紹介します。
・「weatherbase」(http://www.weatherbase.com/)(2009.03.12確認)
このデータベースからは、全世界16,439都市の月別気象統計データを調べることができます。
 
「weatherbase」の詳しい使い方使い方は以下のサイトを参照ください。
 
国立国会図書館 テーマ別調べ方案内 
世界各地の月別気象統計データを調べる − Weatherbase
http://www.ndl.go.jp/jp/data/theme/theme_honbun_400239.html(2009.03.12確認)

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000054768

レファレンス質問から,メルボルンの気候を知るためのデータを提供できればよいということをまず確認しておきます。これは「気候」という単語が非常に広範囲の意味を持っていることによります。調べるときにはより具体的な,この場合は「気温」「相対湿度」というデータとして存在しうる事柄に変換してアプローチする事が肝要です。このあたり,実際のレファレンスでは,レファレンスインタビューというプロセスできちんと経る必要があります。
『理科年表』は,暦部・天文部・気象部・物理/化学部・地学部・生物部・環境部に大きく編立てされており,気候に関するデータは通常「気象部」を当たっていくことになります。
ということで,メルボルンの気候については,世界各都市の気候のデータが載っていますので,気温や降水量についてはデータの入手ができました。
さて,問題は『理科年表』に載っていないデータをどうやって入手しようか,という点です。
ここで,この事例では「Weatherbase」というデータベースを紹介しています。インターネット上で無料で利用できるデータベースですが,これに「Melbourne」をキーに検索し,オーストラリアのメルボルンのデータを表示させます。データの表示には簡易表示(Summary)と詳細表示(All data)の2種類あり,相対湿度は「Relative Humidity」ですから,該当する表から,メルボルンの相対湿度についてのデータを入手できます。
それほど難しい英語ではありませんが,それでも,「英語はちょっと……」と思う場合も無いわけではありません。そんなときには「リサーチ・ナビ」です。この事例では「世界各地の月別気象統計データを調べる − Weatherbase」というテーマ別調べ方案内を紹介していますが,テーマ別調べ方案内は,リサーチ・ナビに統合されています。この調べ方案内には

からアクセスできます。この調べ方案内にはWeatherの使い方や用語の解説が掲載されており,しかも,簡単な調べ方の具体例も合わせて掲載されています。注意すべき点についてもまとめられており,とても有用な解説です。英語が苦手でも大丈夫ですね!
この事例にあるような気象データに関する調査では,ともすれば『理科年表』をみて,得られる情報のみを提供してしまいがちですが,それだけではなく,もう一声,インターネットでも得られるデータも紹介することができれば,よりよいレファレンス回答となると思います。
この事例では,両方をうまく合わせて回答しています。これは本当に素晴らしいものですよね。

「わが恋は行方も知らず果てもなし」の和歌の作者を知りたい。

今回は,和歌の作者をさがすというレファレンスを取り上げてみようと思います。
まずは,回答と参考資料を引用します。

<回答>
二十一代集データベースで下記の歌がヒットした。 

古今和歌集巻第十二 恋歌二 611番歌

L 詞書よみ たいしらす
H 作者(原) みつね
I 作者(標準) 躬恒
W 和歌(原) わか恋は/行ゑもしらす/はてもなし/あふを限と/思ふはかりそ
X 和歌よみ わかこひは/ゆくへもしらす/はてもなし/あふをかきりと/おもふはかりそ

<回答プロセス>
二十一代集データベース(国文学研究資料館) http://ocelot.nijl.ac.jp/dlib/21dai/ (2009/07/21確認)
古今和歌集 / [紀貫之ほか奉勅撰] ; 小沢正夫, 松田成穂校注・訳 小学館 , 1994 (新編日本古典文学全集 11) ISBN:4096580112 p.240

和歌について調べる時に利用できる資料といえば,まずあげられるのは『新編国歌大観』(角川書店,1983-1992)でしょうか。冊子体は10巻20冊のほか,CD-ROM版があります。冊子体『新編国歌大観』の索引は歌集-各句索引で構成されているので,調査の場面によっては使いにくいこともあります(全巻通しての索引がない)。CD-ROM版ではキーワード検索ができるので,特定の語句を含む歌を探すことができますので便利です。両方を調査で使えると効率よく調査が進むと思います。
では,いきなり「国歌大観」のような資料ではなく,できれば初動調査にも使える和歌のデータベースはないかというと,この事例で取り上げている「二十一代集データベース」がいいと思います。国文学研究資料館によるデータベースで,正保版本二十一代集を底本としています。このデータベースで見つかれば当然「二十一代集」に含まれる和歌ですので,あとは質問者の求めに応じた資料(この事例では「古典文学全集」を提供しています)等所蔵調査へ移行できます。
このデータベースで見つからないときは,『新編国歌大観』やその他のレファレンスツールをさらに調査することになると思います。和歌を調べるためのレファレンスブックとしては,『新編国歌大観』や『校註国歌大系』(講談社,1976(1928-1931の復刻版)),『典拠検索新名歌辞典』(明治書院,2007)があります。『典拠検索新名歌辞典』は明治期までを収録対象にしているので,『新編国歌大観』や『校註国歌大系』で見つからない和歌も見つかるかもしれません。
ほかにも沢山のレファレンスブックがありますし,レファレンス協同データベースにも沢山事例が収録されています。そういう情報をまとめて探すには「リサーチ・ナビ」が便利です。国立国会図書館が作成した各種調査に関する情報を総合的に取り扱うサイトです。「本を探す」「調べるヒント」と大きく二つのコンテンツを辿っていくか,あるいはキーワードを適当に入力して,辿っていくかは調査によります。
たとえば,和歌であれば「調べるヒント」→「調べ方案内をカテゴリから探す--言語/文学--文学」→「調べ方案内-和歌・俳句の検索」と辿る方法もありますし,検索ボックスに「和歌」と入力して,調べ方を辿っていく方法もあります。レファレンス協同データベースの事例も同時に検索されますので,便利です。
レファレンス協同データベースを「和歌」で検索するとわかるのですが,地名を詠み込んだ歌の調査には,地域資料が有用であることも多くあります。行き詰まった場合の発想法の一つとして覚えておくのもアリだと思います。
例えば,「http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000001426=笛吹川を詠み込んだ和歌を知りたい」,「近江八景を詠んだ和歌8首を知りたい」などは,地域資料を回答資料として提供しています。
事例と直接の関係がない部分が長くなりましたが,この事例は,基本とされるツールを段階を追ってきちんと使用していることが見えます。提供した「新編日本古典文学全集」もそれなりの評価の定まった資料です。もっとも,古典文学は底本によるテクストの異同という問題がありますので,その辺りは質問者と話をする必要があります。この事例では分かりませんが,多分和歌の作者が誰なのかを確認できれば良かったのでしょうから,底本テクストの異同までは問題にならなかったのだろうと思います。素早く資料提供に至っている点は本当にすばらしいと思います。
この事例にもあるような「和歌の作者をさがす」という質問は,日常的によくある質問かどうかはともかく,レファレンスサービスの教科書や,専門資料論等の授業ではよく取り上げられているように思います。ある程度,定番とされる資料や調べ方が確立している分野と言えますので,こういうのもたまには読みかえしておく必要があると個人的には思ってます。

ネコが登場する井上ひさしの作品を探している。全て文末が「〜のだ」で終わっていた。「サンマだけがマンマじゃないのだ」という文があったと思う。

質問を聞いただけでは,簡単に回答可能なものか時間がかかりそうなのか,一瞬判断がつきません。質問に関わる情報があまり多くなく,手がかりは記憶に残っているもの……というところから適切な資料を提供できるか,というのはレファレンスライブラリアンの腕の見せ所かもしれません。
とはいえ,あくまでもレファレンスですから,きちっと段階を追っていくと資料に辿り着くことができる可能性が高くなります。レファレンスは必要なレファレンスブックを必要に応じて利用するもので,トリッキーな職人芸ではありません。
回答を引用します。

お探しの作品は『新・文学の本だな 小学校高学年6:長靴をはいた猫からの手紙』に収録されている「なのだソング」です。
文末が「〜のだ」で終わっており、「サンマばかりがマンマじゃないのだ」という文も見つかりました。
『作家名から引ける日本児童文学全集案内』井上ひさしの項目からたどりつきました。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000049177

最後の一文が肝要です。この事例では,ここが一番のポイントです。
回答プロセスが書かれていないので,推測するしか無いのですが,この『作家名から引ける日本児童文学全集案内』を調査する以前に多くの資料を参照したのではないかと思います。いきなり児童文学関係を調査することはあまり無いような気もします。児童サービスの担当で,質問段階から児童文学関係ということが分かっていたのかもしれません。
当然ながら,質問に対するアプローチとしては,「井上ひさし」というキーワードが中心になるでしょう。今回は井上ひさし作品で間違いなかったのですが,結果的に異なる作者だとしても,第一段階は質問文から得られる事項を中心に調査戦略を組み立てる必要があるはずです。
幸い井上ひさし作品は各種レファレンスブックに採録されていることも多く,作品を見つけやすいことは見つけやすいと言えるのですが,問題はその次です。「『〜のだ』で終わる作品」をどうやって捕捉するかという点です。こればっかりは原資料にあたってみなくてはなりません。ただ,作品名が「なのだソング」ということで,そこから「あっ,これかも?」と思うことは十分にあるでしょう。事実,作品を参照すると,「なのだソング」で間違いなく文末が「〜なのだ」という詩になっていることが分かりました。
作品と作家を調査するときは,各種辞典の索引をきちんと理解して使う必要があります。このレファレンスブックのように「作家名から引ける」とあれば別ですが,「文学全集総覧」というような資料ですと,その資料は何をどのようにすれば適切な情報を得られるのか,という点が非常に重要になってきます。
ここまでくれば,あとは収録資料を探せば資料へ辿り着くことができると思います。
少ない情報源をうまく生かすには,きちんとレファレンスブックを使いこなす必要があるということがよく分かります(とはいえ,この質問はインターネットでキーワード検索をしてもなんとなく手がかりがつかめますが)。
すこし補足すると,「なのだソング」は『11ぴきのねこ』の合唱版に収録されています。もともとの原作は馬場のぼる11ぴきのねこ』ですが,これを井上ひさしが戯曲とし,さらに青島広志オペレッタ(合唱劇)にしたものです。
ちなみに。
nachumeは高校生のころに,オペレッタでこの『11ぴきのねこ』をやったことがあるので,この質問の回答知ってました。オペレッタとして,あちこちで上演されているので,質問の回答を知ってる人も多いかもしれません。「なのだなのだなのだー♪」ってアレね,って感じで。こういう時って,ウラをとりながら進める必要があるので,資料の提供という段に至るまでが逆に大変だったりします。

新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会&第4回ARGカフェに参加したよ

6月20日に行われた新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会&第4回ARGカフェに参加しました。会場はせんだいメディアテーク(smt)です。
新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会。近くて遠い(微妙な表現ですが)smtに触れることができました。smtというのは,場所柄といってしまえばそれまでですが,定禅寺通りの雰囲気はとても魅力的で,いろんなイベントが開かれていて,楽しい場所です。一方で,「smtってなんなの?」って言われても説明しづらくて,「図書館が入ってるオシャレな建物でー」とか言ってしまうのも事実。本当はそうじゃなくて,企画支援という部署名が示すように,様々なプロジェクトを企画し,それを実現するための支援施設というソフトウェアを持っています。smtの副館長である佐藤さんの話から,smtは空間であるということ,そしてそれをどのように使っていくかということの企画に苦心していることがよく分かりました。
そして,やはり気になるのは,smtと仙台市民図書館との関係。仙台市民図書館はsmtに入居しているだけではなく,一方で,仙台市の中央館でもあり,そういう機能を有している図書館です。それは単に運営主体の違いでしかないといえばそれまでですが,その関係はとても微妙バランスの上に成り立っていると感じています*1仙台市民図書館が図書館であり,中央館でありつづけるならこの関係はしばらく続くのだろうと思います。

続いて,第4回argカフェですが,個人的には3回目の参加です。ライトニングトークを中心に構成されるこのイベントですが,登壇者も参加者も大学図書館関係の方々が多かったのが印象でした。あとみなさんテンションが高かったです。
順番に印象を書いてみます。一応断っておきますが「〜〜のお話し」は私のメモを元に思いっきり要約したものです。それ以外は私の感想等です。

  • 矢内美どり(茨城大学図書館)「一人メディチ家宣言−良コンテンツには後払いの文化を!」
    • 著作物などコンテンツの利用に対して,「後から」対価を支払えるような文化をつくりたいというお話し。
    • まったくおっしゃるとおりだと思います。テクストは単独で存在することはできず,テクストの再生産というプロセスを経て,世界は構築されているはず。テクストをいかにアーカイヴするか,という点にばかり目がいきがちですが(とくにMLAに関係する人々),テクストの利用と再生産をいかに支援するかという点も必要な視点だと思います。
  • 和知剛(郡山女子大学図書館)「「webでの展開に適したパスファインダー作成の試み」こぼれ話」
  • 熊谷慎一郎(レファ協ほめまくり)「レファレンススライブラリアンはどこにいるのか」
    • 当日使用した資料をPDFで用意しました(パワーポイントは使ってません。)。フォントの問題がちょっとあって,配布したものとは微妙に異なりますが,よろしければどうぞ。一部誤字(重複語句)を削除しました。[PDF]http://www8.plala.or.jp/kms/n/arg20090620.pdf
      • ちょっとした裏話。ライトニングトークの5分をどういうスタイルでプレゼンしようか直前まで迷っていました。高橋メソッド風のスライドをつくろうかとも思ったのですが,結局断念。慣れていないスタイルを付け焼き刃でやってみてもあんまり格好良くないなぁというのが大きな理由です。もっとも,パワーポイントを用いて,格好いいスライドと格好いいプレゼンというのも,まだ自分では納得できるスタイルを見つけられていません。その代わりといってはなんですが,前に自分でつくったフライヤー(もともとMicrosoftのサイトで公開されていたwordのテンプレートです。)を流用してみようと思い作成したのが,上記の配付資料です。これを配色を変更し,若干行間や文字の配置を変更しています。ニューズレター風というか。販促チラシ風というか。本題とは関係ないのですが,図書館のイベントチラシなどはデザインをもう少しなんとかした方がいいんじゃないかと思うことが多くあります。そういうこともあって,他のイベントのチラシと並べられていても,手に取ろうと思えるデザインということを意識しました。あと,この資料の右下のキャラクターには名前があって「くまいちろう」君です。デザインは第3回argカフェで秀逸なプレゼンを行った小篠さん*2です。このキャラクターは今後もちょくちょく登場予定です。
  • 渡邊愛子(東北大学附属図書館)「サービス現場のボトムアップな連携を!!学外者利用から考える」
    • 東北大学附属図書館を学外者の方がどれくらい利用をしているかについてのお話しあれこれ。
    • 学外者にとって東北大学附属図書館は実は結構使いやすいと思います。自分が勤務する所でも,実際に足を運べるなら,行ってみたらいいですよと進めることが多々あります。ボトムアップな連携というのは私も実現させたいポイントだと思っています。ぜひプロジェクトを立ち上げたいです!
  • 福林靖博(国立国会図書館)「図書館の“ナレッジ”をくみ上げ、提供する」
    • リサーチナビについてのお話し。
    • 図書館員のknowledge(ナレッジ)をまとめあげる,見えるようにするというのはとても大事な事だと思います(それは別に図書館員を否定するようなことではないのです。)。パスファインダーが大きな成果の一つであり,地域の図書館はその地域に関する調査のためのあれやこれやを整備していくことで図書館員のナレッジは社会に見える形で提供されるのだろうと思いました。
  • 長神風二(東北大学脳科学グローバルCOE)「図書館員からの発信求む−科学コミュニケーターから思うこと」
    • 科学コミュニケーターは異分野との対話である。図書館員も異分野との対話をすべきというお話し。
    • 図書館員が業界の外へ出るべきであるというのはディスカッションの時間にも話題になりました。
  • 半澤智絵(東北大学附属図書館工学分館)「チームで力を発揮する−東北大学附属図書館理工系情報教育支援WGの活動」
    • 東北大学の理工系分館の職員で作成した情報教育関係テキストのお話し。
    • 「個人の能力もさることながら,チームとして力を出せる図書館員を誇りに思う」という氏の言に感動です。プロジェクトマネジメントはそういう風に進められるべきだなぁと思いました。
  • 林賢紀(農林水産研究情報総合センター)「日本国内図書館OPACリストの15年」
    • 日本国内図書館OPACリストについてのお話し。
    • 15年間コンテンツを維持するというはすごいことです。そして,今やきちんとした一つの業務として引き継がれているということもすごいことだと思います。持続可能な事業として展開されていくこのリンク集がこれからも続くことを願っています。
  • 岡本真(ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG))「突撃・隣の図書館−図書館アポなし訪問のススメ」
    • 図書館を訪問するときはアポなしで行った方が中をよく知ることができるというお話し。
    • 図書館は自由に出入りができる空間なので,アポなんてなくても入ることに問題はないので,たしかに,アポイントメントがあると,良く見せたいところを案内されるというのはあります。でも突然岡本さんが来たらびっくりします。
  • 武田こうじ(詩人)「街のことば−Book! Book! Sendai
    • 仙台を本の街にしようという「Book! Book! Sendai」というプロジェクトについてのお話し。詩のリーディングもありました。「本と,生きている」という詩です→【PDF】http://www.library.pref.miyagi.jp/kotobanoumi/pdf/2801.pdf
    • 武田さんとは私が図書館に勤める前から知り合いでした。自分が図書館関係者としてこういう場で一緒になるというのはなにか気恥ずかしいとも感じます。ちょっと前には一緒にイベントを企画して数回リーディングライブを行ったこともあります。そのイベントの時のフライヤーは私がデザインしました。武田さんのリーディングって他の人と何かが違うんですよ。だからこそ,かれは詩人として生きているんだと思います。「詩人なんてあらゆる世界でアウェー」と自嘲気味に話すけれど,あの5分で会場にいた40人近くを一瞬でリーディングの世界へ持って行くすごさは本当にすばらしいと思います。
    • ちょうどこの20日にもBook! Book! Sendai関係のイベントがあり,メディアテークの近くの「マゼラン」というブックカフェでも関連イベントが行われていました。Book! Book! Sendai関係のイベントにも要注目です。
  • 佐藤亜紀山形大学附属図書館医学部分館)「ワタシはコミュニケーションに飢えている!MULU=みちのく大学図書館員連合準備中!参加者求む!!」
    • 図書館関係者が集まって,あれこれやりたいのでMULUに参加しませんかというお話し。
    • すごいエネルギーを感じました。一緒になにかやりたいなーと思ったのですが,ついて行けるか不安が若干ないわけではない…。ともあれ,こういうグループがあちこちにできたらきっと楽しいです。そして,いろんな集まりが生まれていることがなによりもライブラリアンの強さを感じました。
  • 笹氣義幸(笹氣出版印刷)「学術の世界と市民を繋ぐために「印刷屋」にできること−フリーペーパー『まなびのめ』」
    • 『まなびのめ』に関するお話し。
    • 笹氣出版は学術関係の出版をずっと取り扱ってきた印刷事業者さんです。こういう学術情報をあつめたフリーペーパーっていうのはめずらしいしおもしろい取り組みだと思っています。個人的にこういう資料大好きですが,資料として受入している図書館は少ないです*3仙台市内の図書館等にはあると思うんですが…。

以上がargカフェの概要です。要約が間違っていたらごめんなさい。
その後懇親会,2次会,3次会とつづき,楽しかったなぁという一言で感想を終えます。私は21日の朝から普通に勤務でした。元気いっぱい。
今回はこれまでのargカフェとは全然雰囲気が異なっていたなぁと思いました。
私は大学を卒業してから仙台に来たのですが,ちょうど今年で10年経ちました。図書館に勤める前からの知っている人や一緒に仕事をしたことのある人も多かったし,よく話を聞いてみれば,研究科が一緒だったり,共通の知り合いがいたりと近いなぁという部分もあり,よくもわるくも地元だったんだなぁと思います(こういうことを思うと必ず次はどこで生活しようかしらん…と考えたくなります。現実的にはそう簡単には叶いませんが。)。
いろいろ声をかけて頂いた方に感謝です。全員とお話しすることは叶いませんでしたが,本当に楽しかったです。

*1:これは研究会のときに話を聞きながら思ったことでもあるし,日々仕事をしていても思っています。

*2:http://d.hatena.ne.jp/arg/20090302/1235996772

*3:http://webcatplus-equal.nii.ac.jp/libportal/DocDetail?txt_docid=NCID%3AAA12315751

フォローの仕方について考えてみた件。

ちょっといつもとは違う趣向で。レファレンスとはあんまり関係ないです。自分に近いことを書かないというスタンスで記事を書いているのですが,今回はその例外です。
1年前の6月14日は岩手・宮城内陸地震が起きた日です。地震があったその日は朝から勤務をしており,地震があったその瞬間はトイレの中にいました(すみません。ふざけているわけでは無いのですが…)。揺れがすごくて,いろんなものが壊れたんじゃないかと思いつつ恐るおそるトイレから出たのを覚えています。内部ではすぐにいろいろな場所の安全確認等に取りかかりました。
その日は一日を通して余震が沢山起こり,いろいろな情報が飛び交い,岩手県南部と宮城県北部の方で被害が甚大らしいということが分かり,個人的な事情ですが,それがなによりも不安になったのを覚えています。
次の週休日に実家に戻り,あれこれの無事を確認して,幾分ほっとしたのでした。その頃には地震の情報も正確に知ることができるようになっていました。その足で一関や栗原の図書館へ様子を見に行ったのでした。
そんな自分自身の個人的な事情をさておき,災害時のお知らせをどのようなルートでどのように誰に伝えるか,というのは本当に難しいと感じました。「正確な情報を早く入手したい」というのは誰にとっても同じくらい重要なことです。「正確な情報を早く伝える」というのは情報を持つべきところが,持っている情報(集約した情報)を正確なものと判断して公表することです。自分ができることを最大限やるしかないのですが,今思えば,当時の自分の行動は全然外部からの情報要求に応えられていなかったと反省するしかありません。
リアルタイムで応えられないとすると,あとからどうやってフォローするか,を考えたいと思うようになりました。このフォローは「取り繕う」というような意味合いではなく,積極的にコミットする仕方という意味合いで使っています。
データベースを紹介します。

長ったらしい名前ですが,要は宮城県図書館で作成している地域情報の記事索引です。1ページに満たない記事や地域誌なども採録対象としているので,NDL-OPAC雑誌記事索引やciniiでは得られない記事に出会うこともあります*1
このデータベース*2のキーワード欄(論文タイトル欄にあらず)に「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震 」という語をいれて検索すると,この地震関係の記事索引を参照できます。昨年からローカル環境で採録していたデータを随時投入しています。地震直後は一般誌などでもよく取り上げられていましたが,半年から1年経つと,科学的な検証がなされている記事や,調査報告などが見られるようになりました。そして防災対策という点からの検証も増えてきているように思います*3
こういう関係記事の索引化は地味な作業ですし,すぐに役立つとも言いにくいのですが,数多くのデータがそろってくると,後々役立つものです。図書館でできるのは,特にその地域の資料や情報を収集し,そしてアクセスしやすい手段を整える事です。緊急の災害など現在進行形で進んでいることに対しては,何をおいてもその対応をすべきですが,それは当然のことであって,行政機関として,公共施設としてやらなくてはならない対応です。
それとは別に,図書館らしいフォローの一つとして,このような情報のインデックス化というのがあるのではないかと思っています。このような活動がきちっと積み重なって,何か災害について考えるときに必要に応じて利用してもらえるととてもありがたいと思っています。
ということで,あまりまとまっていません。図書館らしいフォローというのがきっとあるんだろうなぁと莫然と思っているというだけなのですが,長ったらしい文章になってしまいました。いろいろ制約があって書けることと書けないことがあるので矛盾やらなんやらが生じているかもしれませんがご容赦を*4

*1:知っている人も多いと思いますが,NDL-OPAC雑誌記事索引採録基準にもあるとおり,3ページ以上の記事を原則として採録対象としています→雑誌記事索引について|国立国会図書館―National Diet Library

*2:見た目とか使い勝手とか,二重レコードの存在や記述文法がいろいろ混在しているとかいう点にはとりあえず目をつぶってもらうとして…

*3:この記事を書いている6月14日時点ではわかりにくいです。

*4:そんな話は今週末のargカフェ@仙台にてしましょうか。