日本が研究開発費にどのくらい予算をあてているか。また国際比較があれば見たい。

前回に続いて,統計情報を調べる方法を検討していきます。定番のレファレンスツールとして登場するのが『統計情報インデックス』です。この資料は名前の通り,国内の主要な統計情報のインデックス(索引)です。キーワードをもとにどんな統計情報があるかを探すことのできる資料です。使い方を覚えてしまえばかなり便利な資料です。
ということで,今回は最近各所で話題になっている「研究開発」に関する費用についての調査です。レファレンス質問の主題は研究開発ということを念頭に置きながら,かつ,効率的に統計データを調べる方法を押さえておきたいものですが,この回答はそれを見事に行っています。回答と回答プロセスを引用します。

<回答>
文部科学統計要覧、科学技術要覧、科学技術白書、国際連合世界統計年鑑、世界の統計、図表で見る世界の主要統計、ユネスコ文化統計年鑑 などをご紹介しました。(詳細は回答プロセスに記します)

<回答プロセス>
A.『統計情報インデックス』で研究開発費、研究費の項目を見る。
→紹介されている7冊のうち、当館所蔵は、4冊(本の情報は、2009年3月時点で当館が所蔵する最新のもの)
1.我が国企業の海外事業活動 第34回 平成16年度海外事業活動基本調査 経済産業省経済産業政策局調査統計部/編 2006.2 国立印刷局(335.2/ワカク 1014773913)日本企業の海外での事業活動についての調査。
2.科学技術研究調査報告 平成19年2007 総務省統計局/編集・発行(407/S2/1-07 1018368983)調査対象は日本のみ。
3.文部科学統計要覧 平成20年版(2008)文部科学省著作権所有 2008.3 国立印刷局ISBN:9784174430832 (370.5/M/6-08 1015203555)日本の統計のみ。
4.科学技術要覧 平成20年版(2008)文部科学省/編集 2008.5 日経印刷 ISBN:9784904260005 (505/K/3-08 1015213836) 
※この資料には主要国等の研究費についても統計データが掲載されている。資料のはじめに、研究費について書かれている。

B.『ビジネスデータ検索事典』で研究開発費 の項目を見る。p.165に、「各国の研究費、研究員数は?」という項目があり、ここには、上記4.科学技術要覧のほか、科学技術白書が紹介されている。
5.科学技術白書 平成20年版 文部科学省/編 2008.5 日経印刷 ISBN:9784990369798 (505/K/1-08 1015260019)p.47に国際比較したグラフが掲載されている。

C.統計のコーナーをブラウジング。国際比較が見たいということだったので、OECDの資料や、国連、ユネスコの資料を確認する。
6.『国際連合 世界統計年鑑』2006 国際連合統計局/編集 2008.7 原書房ISBN:9784562041688 (350/S3/06 1015213513)p.586〜「資金源別研究機関に関する国内総支出」の掲載あり。
7.『世界の統計』2008 総務省/編集発行 2008.3 (350/K3/08 1018376499)p.192に「研究者数・国内研究費」の掲載あり。
8.『図表でみる世界の主要統計』OECDファクトブック(2007年版)経済協力開発機構OECD)/編著 2008.2 明石書店 ISBN:9784750327235 (350.9/ケイサ 1015192493)p.147 にR&Dへの国内総支出の掲載あり。
9.『ユネスコ文化統計年鑑』1999 ユネスコ/編 2000.4 原書房 ISBN:4562032936(350.9/ユ/99 1013515174)p.593に、資金源別国内総研究開発費の構成比 の掲載あり。

http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000052761

回答プロセスを読むと大きく4つのプロセスをへて,提供資料を選んでいることがわかります。いずれも資料へのアプローチが適切なので,ぜひ見習いたいもの。
Aにあげられたのは冒頭でも紹介した『統計情報インデックス』を用いたものです。このアプローチは主題である「研究開発」というよりは,「統計情報をさがす」という調査種別を切り口にしてますが,主題に関係するキーワード「研究費」「研究開発費」を用いて,必要な統計情報を探しています。
研究開発に関する調査統計情報として,1〜4までの資料のうち,ぜひ覚えておきたいのが,総務省統計局の公表している『科学技術研究調査』と文部科学省の公表している『科学技術要覧』です。
研究開発は大学等以外に,企業でも行われていますが,この調査ではそういった企業における研究開発費用についての統計も載っています。いずれも日本国内を対象としていますが,国内の研究開発,科学技術の動向を数値的に把握したいときに参照すると便利な資料です。『科学技術研究調査』の統計データそのものは冊子体以外に,「平成21年科学技術研究調査」でも入手できます。
質問では,国際比較を視野に入れているので,諸外国の数値も把握したいという要求に対応する資料を提供する必要があります。そこで,必要な視点が,OECD国際連合といった機関の発表するデータです。諸外国との比較ということで何らかの調査をするときは『国際連合世界統計年鑑』をまず参照すると良いでしょう。広範囲な分野にわたって各国のデータが得られます。回答プロセスにもあるように,今回の質問に関しては「資金源別研究機関に関する国内総支出」が有効だと思います。
国際連合世界統計年鑑』がすぐに入手できない,参照できない場合もあるかと思いますので,その時は,総務省統計局の『世界の統計』を参照してみるといいかもしれません。この『世界の統計』は主要な項目について各国のデータを得られます。インターネットでも見ることができますので*1,まずは取りかかりとして調査してみるのもいいでしょう。例えば平成21年版には,第7章「科学技術・情報通信」とあり,研究費についても載っています。出典の表はOECDの調査によるものですので,必要であれば,原典であるOECD, Main Science and Technology Indicators Volume, 2008/1 にあたることができます。
資料については,これくらいにして,回答の書き方という点から見てみますと,回答プロセスが秀逸で,それぞれの資料に付されたコメントをみれば,国内対象の統計データなのか,国際比較が可能な統計データなのかわかります。こういう配慮はとても大事ですね。また年刊の資料がほとんどですので,「本の情報は、2009年3月時点で当館が所蔵する最新のもの」のように一言記入しておくのも事例を参考に調査をしようとする人に優しいです。読んで勉強になるし,すごく配慮がされていて,類似の調査にも活用できるもの思います。すばらしいですね。こういう事例の作り方を学びたいですね。
少し余談。統計データはインターネット上の情報源を含めれば,かなり多く出回っています。意図するデータを利用するためには,体系的にまとまった資料を使いこなすことが必要です。そういう体系的にまとまった資料の一つが今回紹介した『統計情報インデックス』です。むやみやたらと検索エンジンで探すより,場合によっては効率的に情報が入手できます。体系的な整理という仕方が効果的である分野の一つが統計データではないかとnachumeは思っています。